人を活かす組織⑪~最高のチームワーク③ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-314
組織においてチームは、いろいろな意味で非常に重要な単位です。一つには、チームは個人の働き方に強く影響を与えます。例えば、人間関係、職場の規範、モチベーション、コミットメントなどです。もう一つは、組織としてのコア・コンピタンスを創る重要な単位としてのチームです。コア・コンピタンスの提唱者であるハメルとプラハラードは、チームは個々人が持っている資産である知識やスキル・経験の相互学習の場であり、情報共有の場であるといいます。したがって、組織が個々人の持っている資産を効果的に活用しようとすれば、チームがうまく機能していることがとても大切になります。そしてチームは、人間関係の問題が常に存在しており、その問題をうまく取り扱わなければチーム、ひいては組織の生産性は必然的に下がっていきます。ODメディアで何度も言及していますが、組織での品質問題やコスト、倫理遵守などを含め、ものごとがうまくいかない多くの理由は人間関係によるものが圧倒的に多いのです。そして、現代組織は、ほとんどの場合、結果を出すためにメンバーの協力関係が不可欠です。
みんなが協力し合ってうまく働くことを「協働性」と呼びますが、すでに学んできたように、開放性(オープンネス)は、協働を効果的に進める上でとても重要な能力になります。協働性は、チームワークを良くしていく上で欠かせないものですが、協働するということにおいても、私たち一人ひとりの好みが異なることは理解しておくことが大切です。協働性には「雰囲気の好み」と「役割の好み」という二つの好みがあります。これは、仲間性、統制、開放性における個々人の違いから生まれます。
雰囲気の好みとは、行動や価値観で構成され、どの雰囲気が良いとか悪いというものではなく、組織やチーム、個人によって変わります。簡単な表にすれば以下のようになります。
欲求が高い | 欲求が低い | |
仲間性 | 一緒に、対話的に | 一人で、個人で |
統制 | 階層や構造をつくる | 自然発生的に、フラットで |
開放性 | 率直に | ビジネスライクに |
役割の協働性は、チームにおいてお互いがどのような役割を演じるかに関係します。役割の協働性は、好みによって2つのタイプがあります。一つは「対決的態度」です。対決的態度とは、どちらも自分が先に行動を始めたい、受け手にはなりたくないと思っている態度です。もう一つは「無気力的態度」です。無気力的態度とは、どちらも受け手になりたい、自分からは行動を始めたくないと思っている態度です。対決的な態度は表面に現れやすく、大っぴらな衝突や権力闘争となり、分かりやすい。一方で無気力的態度は、あまり表面化しない。何かを始めなければならない状況でも、何も始まらない。みんなは、他の誰かがやると思っているので、何も始まらないのです。簡単な表にすれば以下のようになります。
対決的態度 | 無気力的態度 | |
仲間性 | 連絡するな、私から連絡するから | あなたからの連絡を待っています |
統制 | 私がここを任されている、何をしろと命令するな | 何をしたらよいか行ってください、何をしろと私は言わないから |
開放性 | あなたに私を知ってもらいたいが、私はあなたを知りたいとは思わない | あなたに関するすべてを話してください。私は自分のことは黙っています |
チームメンバーに相互に補完できる強み(知識やスキル)があるにもかかわらず、それがうまく活用されていない場合、「雰囲気の好み」と「役割の好み」についての違いがあることを理解していれば、チームワークの問題解決をより効果的に進めることができます。チームワークをよくするには、個々人の拘り(柔軟性のなさ)に気づき、それをオープンに話し合い解決することが大切です。私たちは経験を重ねるにつれ、集団における自分の好みの雰囲気と役割について理解を深めていきます。しかし、一方でそのような理解の深化あるいは熟練は、私から柔軟性を奪っていくかもしれません。例えば、私はいつも先頭に立って物事を動かしていたため、新しい集団で同じような役割をとる人に出会った場合、無意識に競争関係に陥り、常に対決するという態度をとってしまうかもしれません。つまり、ちょっと立ち止まって、他の人に事を起こしてもらい、私は受け手に回るという新しい役割をとることに対する柔軟性を失ってしまっているのです。このような柔軟性のなさはチームのパフォーマンスにとって障害になってきます。チームワークを良くし生産性を高めるには、「雰囲気の好み」と「役割の好み」についても開放性(オープンネス)の原則が活用できるのです。
参考資料:自己と組織の創造学
この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。