• 人を活かす組織⑩~最高のチームワーク 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-313

人を活かす組織⑩~最高のチームワーク 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-313

ヒューマン・エレメントを活用したアプローチは、個人がベストな状態になることを助けるだけでなく、最高のチームを創造することにも活用できます。今回のODメディアは、協働性が高く、生産的なチームを創造する「オープン・チームワーク」について学びます。

人々がチームとして一緒に働くとき、うまくいったり、うまくいかなかったりする理由はどこにあるのでしょうか。チームワークを考えるとき、多くの人々は共通の目的を明示し、それに向けてお互いが役割を明確にし、協力していくことが大事であると考えます。しかしそれだけで十分でしょうか。チームを取り巻く環境は様々に変化し、共通の目標が突然亡くなることも普通に起きます。例えば、新しい製品開発に従事していたチームは、市場の変化によりその製品開発そのものが打ち切りになることもあります。共通の目標とはその程度のものです。このような場合、通常、チームは解散になりますが、それでも同じメンバーで異なる目標に向かって新たに歩き始めるチームもあります。逆境にあってもそれを跳ね返し、力強く前に進むレジリエンス(回復力)を備えたチームとはどのような能力を持っているのでしょうか。最初にチームワークに関する典型的ないくつかの考え方を確認しましょう。

 

「強制:トップダウンオンリー」

  • 強制は最も古く、ある意味伝統的な考え方です。それは、人々は給料をもらうためにその組織・チームで一緒に働いているのであり、一緒に働く意思がなければ解雇され、他の人にとって代わられるという考え方です。この場合、リーダーの言う事がすべてであり、チームメンバーは規律に従い、罰則を意識して仕事をすることが当たり前になります。
  • 強制は、短期的な目標達成には役に立つこともあります。しかしメンバーは常にミスを起こさないことに気を取られ、むしろ自己防衛を助長し、創造性や自主性を制限してしまいます。

 

「妥協:和をもって尊しとなす」

  • 妥協は、人々が一致しないのは避けられないことであると考えます。したがって、チームのためには意見が違いうことを忘れ、お互いを尊敬し、多様性を認め、自分たちの違いを解決するように期待されます。
  • 妥協は強制と比較し明確な否定的行動を生み出すことはありませんが、多くの場合、表面的にうまくやっていくことを繕っているだけになります。みんなは異なる意見を持っていたとしても、チームの和が乱れることに不安を感じてそれを表明しないのです。結果、チームは問題を抱えたままになってしまいます。

 

「補完:お互いの強みを使う」

  • 補完は、目標達成のための課題を分割し、メンバーが自分の得意なことを担当し他の人を補うことです。メンバーの多様なスキルと個性を尊重し、正しく組み合わせることで、チームの生産性を高めようとします。
  • 補完アプローチは、チームづくりの初期段階には役に立ちます。しかし、チームが問題に直面し、メンバーが不安やチーム内にある感情とお互いの人間関係について対処しなくてはならないときには、補完アプローチではその問題を解決することができません。

 

「オープン・チームワーク:隠された感情を認め合う」

  • チームが生産性を十分に発揮できないのは、メンバーの誰かが自分の立場やあり方に固執する柔軟性のなさから起こります。チームが真に生産的で逆境に対処するには、自分たちの柔軟性のなさ、あるいは何かに固執する背景にある「個人の感情と恐れ」を認め検討していくことが必要です。チームのパフォーマンスを改善するには、結局のところ、個々人が自分自身の恐れや不安に気づき、それをチームとして認め合い改善できるオープンさが大切なのです。
  • チーム活動をする場合、雰囲気の好みと役割の適切性は、個々人によって異なります。それは、個人によって「仲間性」「統制」「開放性」の好みが異なるからです。論理的な補完アプローチだけでは、この問題は解決できません。より良いチームワークをデザインし、実践するには「補完アプローチ」と「オープン・チームワーク」の両方の概念を適用することが求められます。

 

私たちは、オープン・チームワークの必要性や重要性を薄々わかっていても、それを実践するには勇気がいります。それは、私だけがオープンになっても、他の人がそれを認めなければ、私は単に感情的な人と見られるか、ピエロになるだけだからです。オープン・チームワークを実現するには、リーダーの理解、対人関係に関する訓練、一緒にうまく働くこと(協働性)に関して対話できる能力の開発が必要です。良いチームワークとは、チームがすべての問題を解決できるということではなく、あらゆる問題を解決する方法としてオープン・チームワークのアプローチを活用することができるということです。

オープン・チームワークは、開放性(オープンネス)という意識レベルをよりどころにします。意識のレベルの向上(欺瞞から自己への気づきへの発達)は、成人発達理論が言うところの「スキーマ:ものの見方や考え方」がより柔軟になり、自分自身を見つめる能力が高まるということと同義です。意見の違う当事者全員が、自分自身への気づきを深めれば、意見の違いを解決する新しい基盤を持つことができるようになります。私たち自身の敵対心や恐れという感情は、より良い協働にとって障害になります。ですから、集団に起こっていることの問題解決には、私たち自身の気づきを深め、持っている敵対心や恐れの原因を確認し、それを認めることが解決の出発点となります。そうすることにより、私たちは他の人を非難することなく自分自身の行動を変えることで新しい、生産的な協働関係を築くことができるようになるのです。開放性(オープンネス)という概念は、個人のみならず、最高のチームワークを創造し、チームのレジリエンスをたかめることにも役に立つのです。

参考資料:自己と組織の創造学

 

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。