人を活かす組織⑧~防衛メカニズムについて 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-311
前回までのODメディアで、私たちが持っている能力を十分に発揮し、喜びを感じるには自己概念を理解することがとても重要であるということを学んできました。今回は、自己概念が妨げられる「防衛メカニズム」について学びます。防衛メカニズム(防衛機制)とは、自分が受容することができない自己概念を無意識に自分から隠してしまう、別の言い方をすると見ないようにする心理的な働きの事です。
例えば、「重要でない、有能でない、好かれていないという思い」や、「無視される、バカにされる、拒絶されることへの恐れ」は、私にとって苦しく不快なので、これらの気持ちや恐れを避けるために、私は無意識のうちに合理的でない行動をとってしまいます。そうやって、自分の現実をゆがめてしまい、私が感じている感情や恐れを他のせいにしてしまうのです。
防衛についてより良く対処するには、葛藤について理解することが大切です。葛藤を自覚しそれを認めることができると、防衛が理解でき、防衛のために使っているエネルギーがいかに無駄なことかが分かります。このことが理解できると私は他者を非難したり、うまくいかないことを他のせいにしたりするのではなく、より良い行動や関係づくりに関して自分自身がどのように考え行動選択をしていけばよいかが分かるようになります。以下、
防衛的行動とはどのような状態なのかを見ていきましょう。
- 決断ができない(優柔不断)
- 責任が負えない
- 傷つき易い
- 勝ち負けにこだわる
- 他者の意見に批判的である
- ものごとをゆがめて見る、自分の考えに固執する
- 外発的動機を重視する
- 他者評価を過剰に気にする
- 人の目が気になり、常にその対応でゆれる
- 疎んじる/疑う
- すぐに口を挟みたがる
- 現実逃避しがちになる
- 思考が停滞する(頭が真っ白になる)
防衛メカニズムにはどのようなものがあるのでしょうか。防衛という概念は、もとはフロイトのヒステリー研究が出発で、アンナ・フロイトによって整理されています。アンナによれば抑圧(実現困難な欲求や苦痛な体験などを無意識の中に封じ込め忘れようとすること)が防衛メカニズムの典型です。シュッツは、いろいろある防衛メカニズムを6つにまとめています。
- 否定者
問題が起こったとしても、自分自身には何も問題がないとして気にかけない。常に感じていることは「問題なし:ノープロブレム」である。これによって私は自分の無力さを隠すことができる。
- 犠牲者(投影)
問題に対処できない自分自身の中にある受け入れがたい不快な感情を隠すために、犠牲者である自分を演じることで他者からの支援を得ることができる。常に感じていることは「かわいそうな私」である。
- 批評家(攻撃)
脅威を感じると反射的にそれに向かっていくことで自分を守ろうとする。常に感じていることは「お前が悪い」
- 自己非難または自己否定(攻撃の逆)
自分を責めることで、他者からの非難を逃れる。悪いのはいつも私自身である。常に感じていることは「私って、いつもダメなんです」
- 援助者または同一視
私は助けを必要としている人を探す。他者の問題に集中すれば、私は自分の問題を考えなくて済む。常に感じていることは「それそれ。あなたはいつもそうだ」
- 要求者または補償
常に他者から認めてもらいたいと思っている。コンプレックス(劣等感)を他の方向で補う。「やりすぎる、何もしない、ツッパリ、ハッタリ」などという行動に現れる。常に感じていることは「もっと私を認めて」
防衛は、否定的でネガティブなものばかりではありません。「昇華」は、反社会的な欲求や感情を、社会・文化的に還元出来得るような価値ある行動へと置き換えることであり、例えば、性的欲求を詩や小説に表現することなどがそれにあたります。とはいえ、やはり防衛は真実の自分を見ようとしないことであり、一時的な回避策でしかありません。防衛から逃れるためには、逆説的かもしれませんが、防衛している自分に気づき、それを受け入れることが脱出のスタートになります。(続く)
参考資料:自己と組織の創造学
この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。