• 人を活かす組織⑦~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-310

人を活かす組織⑦~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-310

ODメディアでは、ここ数回に渡り、個々人のパフォーマンスに影響を与える自己概念(self-concept、自分を見ている枠組み)と対人関係に関するフレームワーク/モデルを紹介しています。今回は、自己概念とself-esteem(ポジティブな自己イメージ)が個人にどのような影響を与えるかについて学んでいきます。

自己概念(self-concept)は、自分で自分をどのように見ているかという私の個人的認知のことです。私が見ている私ですから、自分自身(the self)とは異なります。the selfは、無意識の行動や自覚しないようにしている感情なども含めての全人的自分の事です。

self-esteemは、直訳すれば自己尊重です。それは、「私は、私の自己概念をどのように評価しているか」ということです。この二つは、私たちの効果性や生産性に決定的な影響を与えます。自分自身を良く思っていないと、私はついつい防衛的な行動をとってしまいます。そしてその行動は、私の感情を収める一時しのぎにしかならず、むしろ周囲との関係を悪くしてしまいます。個人やチーム・組織が、気づきを深め、ポジティブな自己イメージを持つことは、より生産的で好ましい、より善い関係が期待できるようになります。そして、ヒューマン・エレメントでは、仲間性、統制、開放性の3つの要素で自己概念とセルフエスティームを説明します。

別の言い方をすれば、「仲間性、統制、開放性」に関する現在の行動を、私はどのように認知し受け止めているのかということが、自己概念とセルフエスティームの意味です。したがって、今の自分に対して肯定的な感情を持つことができていない、あるいは自分の行動に対して私は不満を感じているといった場合、それを変えていこうとするなら、「仲間性、統制、開放性」という3つの要素に対する行動と感情について深い気づきを得て、その不満足な行動や感情がどこからきているのかということを探る(氷山思考を探る)と同時に、新しい行動を試して、自己認知をポジティブに変容させる努力をしていくことが求められます。これは、成人発達理論がいうところのスキーマの変容に他なりません。

ちょっと横道に逸れますが、発達心理学者として名高いジャン・ピアジェ(スイスの心理学者)の「大人の成長」についてみていきましょう。かれは、大人の成長はスキーマ、つまり自己解釈の枠組みが柔軟性を持ち広がることだと言っています。

私たちは誰しも「スキーマ/メンタルモデル」というものを持っています。これは、ものごとを認識する個人が持っている解釈の枠組みであり、体験や知識が体制化されたものです。

ピアジェによれば、私たちが大人として成長していくということは、物事の受け止め方に偏りがなく、多面的に広く認知できる力を身に着けていくということになります。それには、同化と調整を常に行いながら、全体としてのバランスを取ることで発達していくプロセスがうまく機能していることが必要です。この考え方は、成人発達理論の基礎となるものであり、同化、調整、均衡化という3つのプロセスで説明されます。

 

  • 同化

自分の外にあるもの(対象)を自分の中に取り込む働き。その際には、対象を取り込みやすいように変化させる。同化は、スキーマというフィルターを通ってなされる。自分に都合が良いように取り込むことが多い。

 

  • 調整

対象が、自分のスキーマに合わないときはスキーマの方を変える必要がある。

 

  • 均衡化

人は、同化と調整を常に行いながら、全体としてのバランスを取ることで発達していく。ピアジェによれば、これが大人の成長であるとなります。

 

同化と調整がうまくいかない場合、例えば外の対象を否定したり歪めたりして均衡化がなされず、私たちは「頑なになる、柔軟性をなくす、混乱する」などして外にうまく適応できません。

ヒューマンエレメント・モデルでは、スキーマは「自己概念とセルフエスティーム」に左右されることになります。「自己概念とセルフエスティーム」がポジティブでなければ、私たちは外の対象に対して一方的な見方しかせず、柔軟性を無くします。スキーマ、つまり、自己解釈の枠組みを説明しようとすれば、色にはいろいろな色があるように、いろいろな説明の仕方があるでしょう。しかし、いろいろな色も、結局は、3つの主要な色である赤、黄、青から生じています。同じように、仲間性、統制、開放性の3つは、人間行動の理解を単純化できるものであり、人のパフォーマンスや生産的なチームとは何かを探求する効果的なフレームワークとなります。(続く)

参考資料:自己と組織の創造学

 

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。