• 人を活かす組織⑥~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-309

人を活かす組織⑥~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-309

ODメディアは、前回から個々人のパフォーマンスに影響を与える自己概念(self-concept、自分を見ている枠組み)と対人関係に関するフレームワークを紹介しています。今回は、開放性(openness)について学んでいきます。

開放性(openness)は、W.シュッツの最初のモデルでは愛着・親密性(affection)という言葉を使って説明していました。しかし、シュッツによれば愛着・親密性(affection)は、感情を表現するのに適しているが、ビジネスの世界では受けが良くない、またより行動を表現するのには開放性(openness)ということばが適しているということもあり、愛着・親密性(affection)を開放性(openness)に変えています。そんな歴史がある概念ですが、3つのエレメントの一つというだけでなく、私たちが自分の潜在能力に気づいていくとても重要な概念になります。では、開放性(openness)の概念とはどのようなものかを学んでいくことにしましょう。

 

開放性:(openness):私は、開放的(open)か、閉鎖的(close)か

  • 開放性(openness)は、私が相手に対して、また自分自身に対してどれくらいオープンであるのかを意味し、それはその時々に応じて変化するものです。ある時は、私はあなたとお互いの感情や思いを共有する関係を楽しむけれど、別のときには開放的になることを避けます。開放性は、他者との関係においてより強いつながりを確立することにつながるので、通常、人間関係一般において最後の局面になります.
  • 開放性も、仲間性や統制と同様に合理的な部分と防衛的な部分があります。合理的な部分は、私があなたと感情的に関わることに対して柔軟です。防衛的な部分は、開放的になり過ぎて拒絶され、愛されないことに対しての恐れから生じます。開放性は、私が自分の事をどのように思っているかによって、合理的な部分と防衛的な部分がまじりあいます。私が自分の事を良く(ポジティブ)思えば私は開放性に対して柔軟ですが、私が自分の事を悪く(ネガティブ)思えば私はより一層防衛的になります。
  • 防衛的な行動は、極端に二つの方向に現れます。一つは感情的に他者と距離を置くという行動です。仲間性が高くても開放性が低い人は、たとえ集団の中心にいても他者と感情的なかかわりを避けようとします。もう一つは、誰彼となく自分の感情について話し、親密になろうとする行動です。このような人にとって好かれることはとても重要であり、他者に対して愛想良くし、親近感を与えます。
  • 開放性は自己好感に関係します。私が自分自身に対して好感を持っているとき、私は自分という人間を楽しめ、したがって他者とも適切な関係を築けます。逆に、私が自分自身を好きではないとき、他者も私の事を好きであるはずがないと思い、防衛的な行動を選択します。人と距離を置き、秘密を持っていることは、少なくとも、一時的には安心感を与えます。
  • 自分自身への開放性(私の気づき:self-awareness)と他の人たちへの私の開放性は強く結びついています。私が自分自身に開放的でなければ、私はあなたと開放的な関係になることはできない。自分自身の中に起きていることが分からなければ、私はあなたに正確に自分の気持ちを伝えることができない。拒絶されることへの恐れによって私が開放的でない態度に固執するのであれば、私は自分自身の真実の気持ちに触れないようにするでしょう。つまり、自分の感情を歪め、それを自分自身からさえも隠してしまうかもしれません。
  • 組織における開放性のなさは、何か都合が悪いことがあった時にそれを隠す、自分の中に収めるという態度につながり、それは仕事の効率の悪さとなり、パフォーマンスを低下させます。組織で起こる多くの問題は、真実をゆがめたり、隠したりすることによって起こります。つまり、開放性のなさ(真実を伝えることへの恐れ)が問題を起こすのです。組織がいろいろな問題を早期に解決する風土にしたいのであれば、真の意味で風通しが良い、心理的安全が高い、人々の間に高い開放性を築いていく必要があります。

 

開放性は選択の概念と共に、人を活かす組織にとって決定的に重要な概念です。組織や一般的人間関係の中では、「如才なさ」「外交的であれ」「ビジネスはビジネスである」「コントロールを効かせろ」「現実的になれ」というようなことが当然のごとく言われます。しかし、これは組織がより良い活動をしていくうえで、本当に必要な考え方なのでしょうか。人は、自分自身にオープンなとき(自分に嘘隠し事をしていない)気持ちよく感じるし、爽快な気分になります。欺瞞や隠し事をしていると体が重く、呼吸が早くなったり、首がこったり、のどが渇いたりします。そして、人間関係の中で距離をつくり、やる気が低下し、仕事の生産性を下げてしまいます。しかし、私があなたに対して思っていることを正直に伝えることが良いことなのでしょうか。例えば部下が上司に対して「あなたの配慮のなさが、このチームの士気を下げています」ということができるだろうか。通常これは、自分自身を危険にさらすことになり、このようなことは、面と向かっては言いません。これまでODメディアをお読みいただいている方々からすれば、「だからチームづくりが大事なんだ」という意見をいただくかもしれません。しかし、「私があなたについて感じていることを伝える」というのは、開放性(真実)の表面的なレベルです。より深い開放性(真実)のレベルに進んでいくには、私とあなたは、それぞれのレベルでお互いに対して持っている感情について話すことを学んでいく必要があります。そうすることでより深い自己への気づきと自己開示へ進んでいくことができます。開放性のレベルを簡単に見ておきましょう。

-                自分をごまかしている:自己欺瞞

0    隠している、言わない

1       問題の原因を相手のせいにする

2       自分の気持ちを他者に話す

3       自分の気持ちの理由を論理的に語る

4       あなたが私を、どのように見ているかを話す

5       自分が自分をどう見ているかを話す

 

レベル5になれば、それは相手を非難することではなく、より良い関係をつくるには、自分の行動をどのように選択していけばよいかの問題になります。このような気づきとコミュニケーションができるようになると、組織(人々の関係性)の中で起こっている問題解決は、真の解決に向けて、人々の行動変容が必要であるということが理解できるようになります。開放性はチームのレジリエンスを高めることに必須の能力になります。これは改めてオープンチームワークで取り扱います。(続く)

参考資料:自己と組織の創造学

 

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。