2025年1月21日
ODメディア
人を活かす組織⑤~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-308
人を活かす組織やチームをつくっていこうとするなら、個々人のパフォーマンスに影響を与える自己概念(self-concept、自分を見ている枠組み)と対人関係に関するフレームワークあるいはモデルを理解していることがとても重要になります。自己概念や対人関係を語れる言葉は私たちの行動や感情の理解を助け、何にどのようにアプローチしていけばより良いパフォーマンスを発揮することにつながるかを理解することができます。今風の言葉でいえば、ポジティブな自己イメージやwell-being を高める方法を手に入れることができるのです。今回のODメディアは、自己概念と対人関係を説明するために重要な語彙となる、仲間性(inclusion)、統制(control)、開放性(openness)について学んでいきます。
仲間性(inclusion):私は、集団の内(in)にいるか、外(out)にいるか
- 仲間性は人との付き合い方に関係します。例えば、注目されたい、やりとりしたい、集団に属したい、ユニークでありたいという欲求です。根底にある感情は「重要感」です。重要感とは、周囲の人との関係の「あなたは私にとって重要な存在である」と感じること、また、「私はみんなから重要な存在であると思ってもらっている」と感じることに関係します。したがって対人関係上の恐れは、無視される、見捨てられることです。私が私に感じる個人の恐れは、つまらない人、重要でない人、価値がない人です。
- 人にとって、最初の決定は集団の内(in)にいたいか、外(out)にいたいかです。すべての行動には、合理的な部分と非合理的/防衛的な部分がありますが、仲間性においてもそれは当てはまります。仲間性が低すぎるとき、私は内向的で引っ込み思案になります。対照的に仲間性が高すぎるとき、私は外交的で、絶えず人を求めて、他者にも私を探してほしいと思っています。行動の現れ方は異なりますが、どちらも他者から無視されることを避けるために、防衛的で非合理的な行動の選択をしていることになります。つまり、無視されることを避けるには「仲間性が低い行動をとり、最初から他者にかかわらず一人でいること。私から他者を無視すること」、あるいは「仲間性が高い行動をとり、皆に私に注意を払うようにさせること」のいずれかの行動に現れるのです。
- 仲間性が適度にある場合は、私は一人でいても楽しめるし、集団へ強く参加することもできます。つまり、行動に柔軟性があります。
- 仲間性の行動を生み出す基礎となるのは、私が周囲の人たちに対して表現したり、周囲の人たちから受けとったりする重要であるという感情です。この感情の部分を「生き生きしている:aliveness」と言います。私が私を十分に活用することができれば、私は生き生きします。それは、自分の持っている強みや才能を十分に使えているときです。そのようなとき私は達成感や成長感を感じることができます。それは、チームや組織では勤労意欲や生産性に重要な影響を与えます。
統制(control):私は、集団の上(top)にいるか、下(bottom)にいるか
- 統制は、人々の影響力、権威に関係します。例えばそれは、ものごとは自分で決めたいとか、勝利者でいたいとかという欲求です。仲間性とは異なり、統制では目立つことは必要ありません。仲間のチームメンバーが勝利を確実にするまで、ずっと観察していることを好みます。根底にある感情は有能感です。したがって対人関係上の恐れは、バカにされる、恥をかく、非難を受けることです。私が私に感じる個人の恐れは、有能でない、無能な人、偽物です。
- 統制という行動では、目立つことは必要ありません。統制行動は、統制されることに対するその人の反応や抵抗の度合いで明らかになります。
- 他者を統制したいという欲求と、他者に統制されたいという欲求は必ずしも関連するとは限りません。人によっては、他者を統制することを好むと同時に、上司から統制されたいと思う人もいます。逆に統制はするけど、統制はされたくないという人もいます。また、どちらも好まずフラットな関係が好みという人もいます。そして、命令に従うことを好むが、命令を与えることは好まないという人もいます。
- 統制問題は、グループが形成され人間関係が発展し始めた後に起こります。人々は異なる役割を求めて行動を選択し始めます。
- 統制にも合理的な行動と防衛的な行動があります。あまりに低い統制行動では世捨て人のようになりこともあります。自分のパワーを行使せず、自分が責任をとったり、意思決定することを避けたりしようとします。逆に極端に統制を強くする人もいます。常にパワーを求め、他の人が私を支配することを恐れます。防衛的な行動は、どちらの場合も「私には能力がない」という根拠のない不安です。この不安な感情を補うため、最初から統制することを避けるか、逆に、自分が能力のあることを試み続けるのです。統制が適度に発達している人は、統制する立場になれば必要なパワーを発揮するし、必要であれば命令を受けることもできます。
- 統制の核をなす概念は「選択(あるいは自己決定)」です。私が自分の行動を選択していると感じられるとき、私は自己決定しているといえます。逆に、私の行動は外部の力によってきめられているように感じるとき、私は自己決定していないといえます。自己決定していないとき、私は私の行動の結果を他者・外のせいにしてしまいます。そうすることで「私には能力がない」というネガティブな感情を感じないで済むようにするのです。
- ストレスについても選択が関係します。ストレスは、単なるストレッサーという環境を、その人がどのように受けとるかに関係します。ストレスは外にあるのではなく私の中にあるのです。チームや組織が選択の原則から得る最大のメリットは、問題が起きたときにそれを誰かのせいにするのではなく、みんながそのことに責任を取ろうとすれば、問題解決はメンバーのより生産的な関係で解決していくことができるというものです。非難し合うことに費やされるエネルギーは全く生産的ではありません。非難をせずに責任を受け入れることは葛藤解決にとって極めて重要です。私が自分の行動と感情が私たちの状況にどのような影響を与えているのかに気づけば、一人ひとりが問題にどのように関わっていけばよいかがより明確になります。
- 次回は開放性からです(続く)
参考資料:自己と組織の創造学
この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。