人を活かす組織③~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-306~
組織のリーダーや経営者は、どのようにしたら組織をうまく機能させられるだろうかと考え、いろいろなことを試しています。そのアプローチは、近年ではポジティブ心理学やポジティブな組織研究により、人々の潜在能力をより良く引き出すこと、言い換えれば人のベストな状態という普遍的価値の追求がより良い(善い)社会や組織を創るという考えが強く支持されるようになっています。ヒューマンエレメントアプローチ(以下HEA)は、このような概念や実践により具体的なアプローチと方法論を提示しています。
HEAには、いくつかの重要な原則がありますが、その中でも真実・選択・自己概念・全体論は中核的原則になります。
- 真実(openness):真実あるいは誠実とは、隠し立てをしないこと、自分自身の内面に起こっていることに気づき、それを正直に話すということを意味します。会社や組織では「真実というものは、部分的には話すが、全部の真実はめったに言わない」とか、「自分の中で黙って処理する」などが横行しています。しかし、真実を語らないことはとてつもないストレス、隠すための無意味な時間の消費を招きます。真実を言わないために嘘をつくことを決め、人々はどのように噓をつくか、何を言い、何を言うべきではないかを頭に入れて、他の人の嘘を解釈することを試み、ウソがばれるかもしれない状況を避けすためにエネルギーを注いでいます。真実を言わないことは個人と集団・組織の生産性に大きなダメージを与えます。
- 選択(choice)または自己決定(self determination):選択は、私自身が私の人生、すなわち私の考え、感情、感覚、記憶、健康、その他すべての事を選択しているということを意味します。私が何を選択するかは、人間関係、仕事の生産性に影響を与えます。私たちは、しばしば自分に選択の余地があることが分からないという、つまり自分で決めないという選択さえ行っています。
- 自己概念(self-concept):ポジティブな自己イメージを獲得するには「私が私をどのよう見ているのか(これを自己概念という)」がとても重要です。例えば、私たちが何かを新しく学ぼうとするとき、自己概念がその学びと実践に強く影響を与えます。例えば、学んだことを自分のチームや組織で実践しようとするときに感じる恐れや柔軟性のなさ、防衛など、私たちの仕事が組織でスムーズに行われない背景には個々人が持つ自己概念があります。
- 全体論(holism):私たち人間のあらゆる局面(考え、行動、感情、身体)は、相互に関連しています。これは心身相関とも言い、気持ちの在りようは自律神経を通して体にも影響を与えてメンタル不調を引き起こします。
組織はまさに人々の集まりです。一人ひとりが他の人と一緒にベストな仕事ができるようになること、お互いをサポートし合い、自分たちの持っている能力を発揮できるように支援し合い、自発的に個々人の目標と組織の目標を統合することができるようになると、チームや組織は最高のパフォーマンスを発揮するようになります。これはリーダーシップにおいても同じです。どのようなチームや組織も、その成功はリーダーシップと直接的に関係します。リーダーは、チームの使命を実行するために必要なすべての機能を、誰が行うかにかかわらずうまく達成できるようにリードしていかなくてはなりません。したがって、リーダーは自分自身への気づきを深め、自分には何ができ、他の人には何をさせたらよいかを深く考え実践していくことが求められます。達成者としてリーダーというエルビン・セムラッドの考えは、このことをよく示しています。
- リーダーシップスタイルは関係ない。自分をよく知っており、チームの為に自分をより良く使う。
- チームの目的を達成するために、チームが何をすべきか良く理解している。必要な知識とスキル、外部との関係、チームメンバーとの関係など。
- チームメンバーをよく理解し、部下に不平を言うより、部下の強みを使う、最大の貢献を引き出す。
- 意思決定に関して部下の参画を奨励し、意思決定に関する納得感を高める。
- 「チームの成功とメンバーの成功(高い生産性とメンバーの満足感/達成感)が、リーダーの成功である」という強い信念を持っている。
組織の効果性・生産性を高めるには、もちろん仕事に必要な専門性を高めること、生産システム・情報システムなど必要なテクノロジーをうまく使うこと、人々を引き付ける報酬制度や人材管理制度を構築すること、安全な職場を構築することなど多方面に渡り配慮し、整備していく必要があります。しかし、結局のところ人間の潜在能力を効果的に引き出すマネジメントや関係性、リーダーシップを育てていくことがチームの組織や成功に不可欠の課題なのです。
参考資料:自己と組織の創造学
この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。