センスメーキングと変革:ファシリテーターの姿勢② 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-303~
前回のODメディアから、大規模対話集会をファシリテーションするファシリテーターの姿勢を紹介しています。今回はその続きです。大規模対話集会が始まる前の最大の関心事は「招待者が参加してくれるか?」ですが、始まったら、どのように場をマネジメントするかが関心事になります。以下大切なことを紹介します。
①時間と課題を明示すること
時間枠や課題が明確であることは、人々にとって窮屈なことかもしれませんが、一方で枠があることで、人々はその不満を創造的なエネルギーへと転換しやすくなります。大規模なグループでの対話では、枠がなければ場そのものがカオスになってしまいます。これは参加メンバーにも明確に伝えるべきであり、そして時間管理にはメンバーが主体的に取り組んでもらうようにします。こうすることで、メンバーの誰かが時間を支配することを避けることができ、まだ話をしていない人に話す機会をつくることができるようになります。そして、話し合いのプロセスでは「メンバーは課題に取り組み続けているか?」ということが主要な関心毎になります。参加者はファシリテーターが去った後も、課題に取り組み続けなくてはなりません。ですから、参加者が自分たち自身でその課題にコミットメントできるようになることが大切なのです。ファシリテーターがコミットメントできていない原因を探り、それを除去するような介入をすれば、参加メンバーは自分たちで困難な状況を乗り越えるパワーを学ぶ機会を失います。
②反対意見を述べる人を支援する
反対意見は、思考を拡散させるとても大切な機会となります。つまり、異なる意見は、人々がステレオタイプや思い込みを自ら修正するきっかけになるのです。すべての発言は、人がどのように感じているか、どのように見ているか、あるいは聞いているか、信じているか、考えているかを反映したものです。好むと好まざるとにかかわらず、人々が一緒に取り組む場合には受け入れなければならない現実なのです。そして、異なる発言は課題の別な側面を探求する機会になります。ファシリテーターは、すべての発言が、共有されている現実の一部であると受けとめることが大切なのです。
③極点な考えを受け入れる
反対意見が極端に振れることもあります。人々はしばしば固定観念にとらわれて、「良い面」「悪い面」を一方的に主張することがあります。それは、環境認識や、参加している他のステークホルダーに対して徹底的にネガティブな情報しか表明されないなどとして現れます。ファシリテーターは、その際「それは極端なトレンドですね。もっとポジティブなトレンドはありませんか?」などと言ってはなりません。それはファシリテーターが発言を評価していることにつながり、参加者の主体的な意見を封じてしまうことにつながります。ですからそのようなときは「どなたか何かついてすることはありますか?」と尋ねます。情報に「ポジティブである」あるいか「ネガティブである」という価値づけをすることが、参加者自身から生まれてくるのを待つのです。
逆にファシリテーターがしてはならないこともあります。
- コミュニケーションスキルは扱わない
- 課題の中で具体的に何を取り上げるかは指示しない
- 意見の不一致を調整することはしない
- 人々の意見を解釈して言い直すことはしない
- 人々の動機や行動の仮説にすいて意見を述べることはない
要するに、ファシリテーターが自分ならしないようなことを参加者が行っても、そのプロセスを第三者として解釈して、介入するようなことはしません。ファシリテーターはただ耳を傾けるだけです。フューチャーサーチにおけるファシリテーターの役割は、参加者が未来に向けて、自分たち自身の力で行動するように促すことです。それを実現する有効な方法は、重要な課題について幅広い見方を模索し、誰か一人だけがのけ者にされるような立場に立たされることがないようにすることです。ですから、できるだけ自主管理で対話を進めることを奨励します。自主管理のルールはシンプルなものです。それは対話グループの中で「対話のリーダー(司会進行役)、タイム・キーパー、記録係、報告係」の4つの役割を決めることです。ただし、強く要求するのではなく、提案します。役割を決めないグループもあるかもしれませんが、そのようなグループは役割を分担しているグループの進み方を横目で見て、多くの場合、自分たちもやってみようとなります。これによって、参加者は、フューチャーサーチのいくつかの対話セッションで、何らかの役割をとることになります。つまり誰しもがリーダーシップを発揮するのです。そしてこのような構造は、アクションプランが実行される確率に多大な影響があります。ファシリテーターの仕事は、対話を円滑に進めることを管理するのではなく、参加者が未来に向けて前進していくことに注意を向けるのです。混乱が起きても、それは参加者自身が「参加者の関係の現実を表しているもの」として受け止めてくれることが大切なのです。ファシリテーターが、参加者に相談なしに問題を診断し、解決を試みることはフューチャーサーチの目的と実りを台無しにしてしまいます。ファシリテーターは行動を少なくすることでより多くの実りをもたらすことが大切なのです。
参考資料:フューチャーサーチ
この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。