• センスメーキングと変革:ファシリテーターの姿勢① 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-302~

センスメーキングと変革:ファシリテーターの姿勢① 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-302~

大規模対話集会において、参加する人々のセンスメーキングの変容を促すファシリテーターの姿勢は非常に重要です。今回のODメディアでは、大規模対話集会の実践方法として紹介しているフューチャーサーチをファシリテーションする場合を例にとって、その役割や姿勢を紹介します。それは、一般的な会議の司会とは大きく異なります。大切なキー概念は「手放すことによる介入」といわれる姿勢です。つまり、ファシリテーターが、ファシリテーターの好みで場をコントロールしないことが重要なのです。大規模対話集会は「参加者の、参加者による、参加者のための」対話なのです。ジャノフやワイズボードは以下のように述べています。

  • 参加者の考え、経験、エネルギーのみを取り扱う。
  • 異なる意見や違いがあっても、参加し続けるように促す。
  • 人々が共通の傘(認識の大きな枠組み)をもつことができ、行動についての多様な選択肢が出てくるまでは、問題解決に入るのを阻止する。

 

ただ、大規模対話集会の実施で注意すべきことは、しっかりした企画ができているということです。これは、すでに成功の条件として紹介しています。志が低く、適切なステークホルダーの参加がなく、リーダーに変革の意志がない場合は、どのようなファシリテーションも役に立たず失敗します。

大規模対話集会のファシリテーターにはいくつかの重要な考え方(哲学)があります。対話のプロセスの中に、何度もの経験と試行、気づき、その結果としての自己との出会いがあり、異なることを受容し、そして選択するということが含まれていることはとても重要です。好むと好まざるとにかかわらず、参加者が得るものは自らに見えているものから得ます。ですから、意識していないこと、見えていないことからは何も起きないのです。ファシリテーターは、「人を良くすること」ではなく、「参加者が、自分たちの力で良くなる方法を見つけられること」を支援します。

次に、「参加者は、行う準備ができていて、行う意思があることしか行わない」ということをファシリテーターは理解しておくべきです。多くの人は、他人が考えた処方箋を受け入れることには気が進まないのです。この考え方は、E.シャインのプロセスコンサルテーションと通じます。ですから、第三者が診断し、そのデータから処方箋を提案しても、多くはどこかに葬られます。そして、それは「抵抗」というラベルを貼られて対処されがちです。大切なことは、参加者自身に見えていて、参加者が表面化させた問題以上に深遠で意味のある問題は存在しないということです。だから、ファシリテーターは、いつか取り組むことができる問題ではなく、今取り組むことができる問題に集中することができるように支援します。

第三に、私たちはそれぞれ異なる存在であり、異なる経験をもとにして、それぞれの経験にフィルターをかけます。つまり、それぞれの異なるセンスメーキングがあります。そしてそれを根拠として、自分なりの「勝手な事実」をつくり上げます。私たちは、このようなプロセスで形成された信念や思い込みに基づいて行動します。これは、じっくり考える必要がある「事実」です。私たちが行動を変えるということは、私たちが信じている認知を変えるということです。さらに、私たちが持っている認知は、多数の人の異なる認知に触れ、かつ、自分の認知を守らなくても(防衛しなくても)発言することができる状態(心理的に安全な状態)において、より変わりやすくなります。

第四に、私たちは大勢の人数で実施しているミーティングでいろいろな人と話そうとして動き回ると、それは空間の中で単に自分の位置を変えているだけでなく、部屋の中の全体の雰囲気、人々の関係性、エネルギー、変化への可能性を変えているのです。つまり私たちは「動くことによって、動かすことができる」といえます。ですから、最も効果的なミーティングは、思考、身体、心などのすべての部分を使うことができるものであり、したがって、人々が動きまわり、座り、話し、聴き、想像し、反応し、行動する機会が提供できるものが望ましいのです。大規模対話集会は、そのようなことを実現できるように場や進め方をデザインし、ファシリテーションしていくことが大切です。(続く)

参考資料:フューチャーサーチ

 

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。