センスメーキングとOD⑤~組織におけるセンスメーキング1. 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-288~
今回のODメディアから、組織におけるセンスメーキングを展望していきます。ワイクのセンスメーキング inオーガニゼーションズの、第3章「組織におけるセンスメーキング」が今回以降の主要な参考内容になります。この章の目的をワイクは次のように語っています。「組織がセンスメーキング・プロセスをどのように構築するのか、逆にそのプロセスによってどのように組織が構造化されるのかを明らかにする」。そして内容的には、
- 組織のセンスメーキングに関するアイデアがどのように展開してきたかの歴史的確認
- センスメーキングと組織化ということの関連性の確認
- センスメーキングと組織化の具体的調査
の3点を論じています。③についてはセンスメーキング inオーガニゼーションズでは、スコットランドの高品質カシミアセーター製造業界研究を取り上げていますが、ODメディアではこの例は割愛します。具体的例については、前回のODメディアにおいて旭酒造を取り上げていますので、そこに立ち戻って確認していただくのが良いと思います。旭酒造については、いろいろな情報が取りやすいということ、また日本の企業でもあり馴染みが深いということもあり、読者の皆さん自身が情報を収集して、センスメーキングと組織活動あるいは組織変革ということを考えていただくとよいのではないかと思います。そこでODメディアでは、①と②に焦点を当て組織におけるセンスメーキングを論じていこうと思います。
センスメーキングの歴史的ルーツでは、ワイクは、最初に、Burns and Stalkerの機械的組織と有機的組織の区分を取り上げ、有機的組織の意味合い/定義を掲載しています。有機的システムとは「作業集団の共通の利害について、また業績や個人の貢献、専門知識、そして個人やグループを評価するとき考慮すべき諸々の事を判断するのに使われる基準や尺度について共有された確信からなる条件依存的恒常システム」を有するときに機能するとなります。ちょっと難しい表現ですが、要するに組織が有機的に機能するには、仕事の仕方についてみんながある一定の思考と行動(情報処理プロセス)を有している必要があるということです。機械的組織と有機的組織は、どちらが優れているということではありません。ワイクが機械的組織と有機的組織の分類を最初に取り上げているということは、センスメーキングの概念的ツールの代表的なものの一つと認識しているといってよいでしょう。彼は、組織のセンスメーキングの重要な資源として、55個もの重要な文献を取りあげていますが、筆者の独断と偏見でOD視点から見て(どれも大切ですが)特に大切だと思うものを以下紹介します。
- Barnard,1938:組織は、コミュニケーションによって意識的に調整された行為のシステムとみなされ、それがセンスメーキングのツールとしての行為や意識的な情報処理、をもたらす
- Jaques,1951:(組織)文化という概念は、習慣的かつ伝統的な考えや行動の仕方として現れ定義される。それは、程度の差こそあれメンバー全員に共有されており、新メンバーは、会社の業務に携わるために、その文化の概念を学び取り、部分的にでも受け入れなければならない。
- Festinger,1957:センスメーキングは、意思決定後の不協和を低減する働きをする。
- Dalton,1959:あいまい性の中で生き残るためには、自分の見ているものを自分のしたいことに適うように解釈しなければならない。
- Kaha, Wolfe, Quinn, Snoek, and Rosenthal,1964:役割があいまいなためセンスメーキングがなかなかできないと、精神の健康に悪い影響が出る。
- Berger and Luckmann, 1967:時が経つにつれた、人はパターン化された仕方で行為し、そのパターンをリアリティとして自明視するようになり、そして自らのリアリティを社会的に構築する。
- Pondy,1978:リーダーの有能さは、自分たちの行っていることに意味を与え、自分たちの行動の意味についてコミュニケーションできるように意味を明確化する能力にある。
- Smircich and Stubbart,1985:戦略が展開される環境は、戦略家が自ら作った環境である(補足:戦略家が思考するような範囲で情報を集め、それによって戦略を思考するという点で)
- Dutton and Jackson,1987:問題に脅威と好機のどちらのラベルを貼り付けるかによって、その後の問題処理に向けられる認知や動機づけが変わってくる。
- Feldman,1989:観察によれば、官僚は、構造がよくわからない政策問題に取り組むとき、利害について、社会の定義よりも、むしろ組織の定義を反映した集合的解釈(自組織の都合による解)をする。
- Dutton and Dukerich,1991:ニューヨーク港湾局が施設内のホームレス問題に取り組むにつれて変化していった港湾局のイメージとアイデンティティは、職員が問題を解釈し、取り組む仕方に影響を及ぼした。
私の主観で選択しましたが、組織におけるセンスメーキングは組織をどのように理解するかに関係します。乱暴な言い方ですが、組織構成員のセンスメーキングが組織を構成し起動させるといっても良いかもしれません。別の言い方をすれば、組織構成員の頭の中にある認識とその集合体である組織メンバーに共有された「うちの組織ってね~~~~」という認識の仕方、つまりセンスメーキングが一人ひとりの行動選択を促し、組織として動いていくのですね。
参考文献:センスメーキング inオーガニゼーションズ
この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。