[組織開発]教科書から学ぶ㉘~チームづくり 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-281~
[組織開発]教科書から学ぶチームづくり今回は、チームづくりの4つの主要目標の④に焦点を当てます。
- 目標あるいはその優先順位を設定する。
- 目標達成の作業を分析し、その遂行方法を明確にする。
- チームメンバーの役割と責任に従って担うべき課題・作業を明確にする。
- チームの規範や意思決定、コミュニケーション・プロセスを検討し、メンバー間の関係を明確にする。
チームにおける人々の関係性は、ヒューマン・プロセス(以下プロセスと表現)といわれます。プロセスは、タスク・プロセスとメンテナンス・プロセスの2つに分けてみると理解が進みます。
タスク・プロセスは、チームの課題達成に直接的に影響するプロセスであり、特に、目標設定、意思決定、メンバーの組織化のプロセスが関係します。具体的な行動は、「活動に着手する、情報を求める/与える、意見を求める/与える、詳細にする/まとめる、実行計画を検討する/評価する などです。
メンテナンス・プロセスは、チームの維持に影響するプロセスであり、参画を奨励する、信頼関係の構築、オープンな話し合いなどが含まれます。具体的な行動は、「参画の促進のため声をかける、問題点を整理する、基準を設定する、フォローする、感情を表現する、合意形成の可能性を試す、調整する、緊張を和らげる」などです。メンテナンス・プロセスは、近年では心理的安全として知られるチームの規範や雰囲気を構築することです。メンテナンス・プロセスがうまくいっていないと、それがタスク・プロセスに影響を与え、結局、チームのパフォーマンスは低下するという現象を引き起こしてしまいます。メンテナンス・プロセスは、チームメンバー間に存在する対人関係の諸問題を明確にし、問題解決していく必要があります。[組織開発]教科書の事例に基づきこのことを考えてみましょう。
『ケースは、米国のあるハイテク企業のトップマネジメント・チームである。このトップマネジメント・チームの風土は開放的で自由であり、アイデアや技術面の問題について討議するときは特にそうであった。自分たちの感情や対人関係では、お互いに開放的でありたいという願望を持っていたが、個人的なスタイルやメンバー間に見られる相互関係などのために、このような願望は十分にかなえられていなかった。対人関係の問題が起きると、チームはその対立を避けようとした。このような態度は、社長が強化し支持したものであったが、社長は部下から敬愛されていた。時間がたつにつれて、チームにはサブ・グループができ、互いにチーム間の関係改善の必要性を訴え始めた。チームメンバー全員が、対人関係の問題を解決するミーティングの開催に合意し、外部の支援の下に対人関係の問題解決ワークショップが開催されることになった。
ワークショップでは、各人は自分の強みと弱みについて同僚全員の認知をフィードバックされた。このフィードバックは、どんな行動に喜びを感じたのか、悩んだのかを認知した通りにそれぞれに伝えるものであった。フィードバックによって、チームの活動に影響を与えてきた年来の課題がいくつか表面化してきた。例えば、昔からずっと競争関係にあったある2人の関係が、このチームでも競争意識を持ち続けていることが分かった。そして、周りの人間は、この2人がこうした対立した人間関係にあるため、技術面の信頼関係が損なわれているのではないかと感じていた。このような状況が明らかになり、またそれを、当事者を含めチームメンバーが認識したことにより、将来このような現象が起きた時には、率直に注意を促すことに全員が合意した。社長もチームからのフィードバックを受け入れ、これを理解した。このワークショップでの顕著な利点は、チームがこれから先、必要に応じて適宜、このような情報を自由に表明できるようになったことであった。トップマネジメント・チームは、対人関係の問題を解決する新しい能力を手に入れたのである』
このケースでは、ODメディアでもすでに紹介しているビオン理論がそのまま見て取れます。また、心理的安全や、W.シュッツが提唱するオープンネスの大切さも理解できます。対人関係という、その社会的文化を背景とした、ある意味微妙な問題は、チームのタスク・プロセスに影響を与え、結局はチームのパフォーマンスを阻害します。どのような介入であっても、関係性に関するフィードバックが欠かせません。そして、関係性については、個々人で対人関係に対する指向性が異なることを理解しておくことが大切です。
W.シュッツは対人関係の指向性を「inclusion:参画、仲間性」「control:統制、支配性」「affection/openness:親密性、開放性」の3つの要素から見ることを提唱しています。この3つの指向性は各人で異なり、それが対人関係の問題を引き起こす要因になったりします。チームメンバーの関係性は、単に役割の理解だけではなく、心理的な対人関係上の欲求や、自分自身への評価である自尊感といった感情的側面が影響を与えることを、私たちはよくよく理解しておくことが大切です。
参考文献:[組織開発]教科書
この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。