[組織開発]教科書から学ぶ㉓~組織への介入 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-276~
ODと言おうとが言うまいが、組織変革は誰かの介入という行為から始まります。もちろん、診断も介入の一形態です。診断するということ自体、クライアントからすれば「何か始まるな」ということを認識させることです。そしてそれは、クライアント当事者自身が実施する場合と、第三者が支援し実施する場合もあります。また、プロジェクト的に組織システム全体に対する何か月あるいは何年にもわたる介入もあれば、2日間のワークショップで終了する場合もあります。要するに介入の形態は、千差万別であり個別に設計していかなくてはなりませんが、今回のODメディアでは介入で承知しておくべき基本的な事柄について述べていくことにします。
第一に、介入を実施するには以下の3つの条件が十分であるかを確認する必要があります。
- クライアントが変革に対して感じているニーズに応えていること。
- 介入の計画と実施つまり変革にクライアントを主体的に関わらせる(インボルブ)させること。
- 組織文化の変革を導くことをクライアントが理解していること。
また、アージリスはOD(変革)実践者の主要なタスクとして以下の3つを上げています。
- 妥当性と有用性に富む情報の入手と理解
- クライアント組織を形成している諸要素とその相互関係性が理解できる情報。
- クライアント組織に問題を生み出す可能性がある情報。
通常こういった情報は、クライアントへのインタビューで入手することになります。そしてそれは、その組織の人々が認知し感じていること、あるいは主たる関心や課題です。それらが、すべて正しいということではないが、しかし介入の第一段階はクライアントが問題と感じていることに焦点を当てることになります。
- 自由な選択
自由な選択とは、「意思決定するところ(場)が、クライアント・システムの中にある」という意味です。つまり、クライアント自身が意思決定できることが大切であり、変革活動の代替案もクライアント自身が持っています。言い方を変えると、介入の具体的活動は、あらかじめ規定されたり、強制されたりするものではないということです。アージリスは以下のように言っています。「クライアントが自由に選択するには、自分たちが重要だと考える代替案をすべて探求し、それから自分たちにとって革新的ニーズを選び出せばよい」
- 内面的なコミットメント
内面的コミットメントとは、選択した結果をクライアント自身がオーナーシップをもって受け止め、その実施に責任を持つことです。組織のメンバーは、自ら選択したものに基づいて行動することから主体的な変革が可能になります。
特定の介入を計画する際は、以下の3つを考慮する必要があります。
- 変革に対するクライアントの心構え・準備度(レディネス)を把握する
- 変革がその組織のパワーが発生する場(個人または集団)に連結していること
- クライアントの内部リソースを活用ないし調整し、変革プロセスの管理・モニター・維持の促進をはかる
確かにこの3つはとても大事です。しかし、変革に対するその組織のレディネスは、実は介入を実施する前には、本当のところは分かりません。介入を実施してから様々な考えや特有の価値観や意識構造が立ち現れてきます。ですから、以前にも紹介したアクション・リサーチの考え方とプロセスが欠かせないのです。また、最近の特に日本で実施される対話型と称するODの進め方を見ていると理想と心意気は感じるのですが、それが本当にパワーのあるところ(個人や集団)とリンクしているのかと疑問を感じる場合があります。変革は、どのような言い方をしても個人あるいはグループがパワー(7つのパワーを思い出してください)を行使しない限り起きるものではありません。ですから、ODコンサルタントはパワーの所在をしっかりと認識し、それをどのように生かすのかを明確にしておく必要があるのです。
クライアントの内部リソースを活用するということは、ODの実施にあたってクライアント内部のチェンジ・リーダーをできるだけ早く任命した方がよいということです。クライアント組織の変革に責任を持てるのは、内部の人たちです。これは何もトップマネジメントを指しているのではなく、その周囲を固める上位のリーダーたちが重要であることを意味します。彼らは、変革の進捗状況を観察・検討し、必要な手を計画・実施していきます。つまり、変革のプロセスを、そこに寄り添いながらマネジメントできるのは内部の人間だけなのです。彼らは、パワーの所在・源泉となる人と頻繁にコミュニケーションをとり、外部のODコンサルタントの助言を得ながら必要な施策を実施していきます。(続く)
参考文献:[組織開発]教科書
この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。