• 組織の<重さ>とOD⑪~組織の<重さ>と組織プロセス 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-240~

組織の<重さ>とOD⑪~組織の<重さ>と組織プロセス 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-240~

ODを論じる時に、リーダーシップやパワーといった要素との関係は切り離せませんが、組織の<重さ>研究もこのことに言及しています。リーダーシップやパワーという要因は、組織を扱う場合「組織プロセス」という言葉で表現されます。組織プロセスは、組織の形をつくる構造や仕組みといったハードウエア―に対するソフトウエア―の領域として扱われます。ソフトウエア―は、その組織の非公式な側面での動きを左右する要素であり、特定の特徴がみられるとそれはその組織の文化として理解されます。組織の<重さ>研究では、上記のことを以下のように説明しています。

『組織の特徴は、(a)比較的安定的なパターンを生み出す基盤(組織構造のあり様)の特徴と、(b)その基盤の下で人々が行う行為と相互作用(プロセス)の特徴という2つの側面に分けられる。(中略)前者を特徴づける変数は組織構造変数と呼ばれ、後者のそれは組織プロセス変数と呼ばれる』

ODの視点から言えば、組織プロセスは重要な変革ターゲットになります。前回までのODメディアは、組織の<重さ>と組織構造変数の関係を紹介しましたが、今回から組織の<重さ>と組織プロセス変数の関係を紹介することになります。組織の<重さ>プロジェクトでは、組織プロセス変数の具体的な対象は、BU長のリーダーシップに関わる属性とコンフリクトの解消法です。面白い内容になりそうです。組織プロセス変数と組織の<重さ>の関係を見る前に、ヒエラルキーにおけるパワー分布の考察をおさらいしておきましょう。

ヒエラルキーにおけるパワー分布の考察では、BU長の持つパワーの大きさと組織の<重さ>には強い相関があることが確認されています。例えば、軽い組織のBU長は、重い組織のBU長よりも強い影響力を保有していました。また、職能部門長とBU長の相対的なパワーを尋ねた問でも、軽い組織のBU長は短期的な問題から長期的な問題に至るまで、職能部門長より強い影響力を持っていました。つまり、部門の勝手を許すのではなく、ビジネスユニット(BU)という統合組織の長(BU長)が強い影響力を持っている方が、組織的には軽い組織になるということが確認されたわけです。

それ故に、BU長が実際にはどのようなリーダーシップ行動を選択し、何を権力の基盤(パワーベース)として組織メンバーをリードしているのかという組織プロセスに関する特徴も、組織の<重さ>を左右する重要な要因であると予測されるのです。組織の<重さ>プロジェクトでは、BU長の特徴について、以下のように分類される合計14の質問を作成し調査しています。

  1. 自組織名でのリーダー行動の特徴タスク志向(タスクの遂行・業績追求に関連した行動の志向性):4項目
    • 業績を上げるミドルを評価する
    • 企画書の細部にまでチェックを入れる
    • 具体策を発信している
    • 理念を重視し発信している

 

  1. 人間関係志向(集団としての調和や人間的な配慮を重視する志向性):3項目
    • 部下の声に耳を傾ける
    • 部下の心にきめ細かい配慮をする
    • 失敗したら私(部下)を擁護してくれる

 

  1. 対外影響力:3項目
    • (BU長は)トップマネジメントに対して影響力がある
    • (BU長は)取引先に影響力がある
    • (BU長は)他部門・他BUを動かせる

 

  1. パワーベース:4項目
    • BU長のような人になりたいから従う(同一パワー)
    • BU長の経営判断が適切だから従う(情報パワー)
    • BU長(ライン長)の命令だから従う(正統パワー/ポジションパワー)
    • (BU長の命令に従わないと)昇進・昇格で不利になるから従う(賞罰パワー/報酬パワー)

 

この分類は、経営学やリーダーシップを少しでもかじった方々なら「なるほど」と納得できる項目だと思います。教科書的な理解では、タスク志向と人間関係志向(リーダーシップの2大機能;マネジリアル・グリッド、PM論、ハーシーとブランチャードのSL理論でおなじみ)の両方の特徴が共に高いリーダーが良いリーダーである(神戸大学の金井さんは、これをhigh-high paradigmと呼んでいるらしい)となりますが、果たして調査結果はどのようなデータを提供してくれるのでしょうか(続く)

参考文献:組織の<重さ>2007

 

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。