組織文化とOD㉙:組織文化変革に関するリーダーの役割②~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-227~
組織成長の各段階における組織文化とリーダーのリーダーシップの関係について、今回は組織の中年期および成熟期に於けるリーダーシップです。
中年期とは、E.シャインは特に厳密な定義をしていないのですが、経営陣が数回代替わりをしている組織を指しています。これまでの中で理解しているように、組織文化は組織メンバーに一定の安心感を与えることになるので、環境変化によって育んできた文化が機能障害を起こすようになったとしても、人々は積極的に組織文化を変えようとはしないものです。とはいえ、規模が拡大し中年期に入った組織は二つの異なったパターンを示すことが多いようです。一つは、これまでの文化を更に発展させる組織。もう一つは、成長と多角化を文化の面でも認めてきた組織です。後者は、事業単位や職能単位、また地理的単位(国別単位)に関して異なる文化を持っています。この段階で文化を如何に管理するかは、リーダーたち(経営幹部)の意志にかかっています。リーダーは、組織が将来に渡りもっとも力を発揮しうるように事業と組織形態についての意思決定を行っていくことが求められます。このことは、文化的多角化を認めることを意味します。従って、多角化あるいは分権化を進めていく過程で、どのような文化は統一性を確保し、どのような新しい文化的仮定をそれぞれが育てていくのかを見極めなくてはなりません。リーダーに最も必要なのは、文化が組織の目的遂行に推進力・規制力の双方からどのように影響するのかを洞察し、望ましい変化を起こすために介入を実施する能力です。そして、この段階で最も困難なことは、変革をリードするリーダー(トップマネジメント)の発見・選任です。これがうまくいかないと、組織は文字通り管理(マネージ)されてはいるが、リードされてはいない状態となります。日本の組織の場合、リーダー育成プログラムに「組織文化についての学習」が入っていないことがほとんどです。筆者も慶応ビジネススクール(MDPコース)を受講したことがありますが、組織文化の理解とその影響についての授業は1~2単元しかなかったように記憶しています。
成熟した組織においては、そしてその組織が統合力を持った強力な文化を発展させてきた場合は、文化は「リーダーシップ」とは何と心得るべきか、英雄的あるいは罪となる行動はどのようなものか、そして権威と権力はどのように割り当て管理すべきかを規定することになります。こうして、過去のリーダーたちが創造してきた文化が、今や盲目的に自己を永続させていくルールになってしまうのです。このような段階でリーダーに課せられる課題は、文化が環境に順応していくだけの機能を発揮しているか、またはそうではないかを見極めることです。文化に環境順応力がなければ、リーダーは文化を変革していく方法を探し出さなくてはなりません。このような場合、誰をリーダーに選任するかがもっとも重大な課題となります。リーダー選任は、内部からと外部からの両方があります。日本の企業の場合、NTTの場合は外部登用でした、1990年代後期から始まる大丸の組織変革は内部登用でした。どちらの場合もリーダーは、組織文化の現状をよく理解し、それを解凍し、再定義し、変革し、その上で新たな仮定を再凍結する一連の変革をリードしていくことが求められます。このような変革プロセスは1年とか2年で終わるはずもなく、従って任期は長くなります。リーダーシップもトップマネジメントだけではなく、職階毎のリーダーシップを含めて3つのリーダーシップが必要であるといえます。(下記図参照)
大規模な組織変革においては、トップマネジメントのリーダーシップ(Magic Leadership)は必須ですが、それだけに頼ることは組織メンバーの責任回避であり、メンバーはリーダーに服従することになります。トップマネジメントのリーダーシップに加えて、組織の一人ひとりがリーダーシップ能力を開発し実践していく(Instrumental Leadership)ことが大切です。加えて変革促進する制度や仕組みを整える機能(Institutional Leadership)も求められます。このような3つのリーダーシップがかみ合って、世界を変えるのは個々人の実践にあるという認識が醸成されることがとても大切です。この3つのリーダーシップの中でも、やはり組織の方向付けをリードする機能(Magic Leadership)は最重要であるといえるでしょう。では、このリーダーシップを発揮するには、リーダーにどのような能力が求められるのでしょうか。組織文化とリーダーシップの最後のテーマは、内部から変革をリードするリーダーに求められる能力です。(続く)
参考文献:
「組織文化とリーダーシップ;E.H.シャイン」
この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。