組織文化とOD㉓:組織文化の変革➅~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-221~
ODメディアは、前回から引き続き計画的組織文化の変革、今回はステップ2.と3.です。
【ステップ2.変革対象を設定する:What】
【ステップ3.介入方法を策定する:How】
歴史があり成熟した文化を変革する場合は、組織のあらゆる重要な要素を取り扱わなくてはなりません。組織文化のビジョンを再明確化し、それを冊子にして配れば文化が変わるというようなものではないのです。従って、組織が置かれている状況を十分に理解した上で「何」を「どのように」変えるべきかを慎重に計画する必要があります。ステップ2.では、組織の整合性という概念が役に立ちます。整合性という概念では幾つかの組織モデルが提案されていますが、下記の図はその参考になるでしょう。
- 介入スタンス1.:戦略的組織適応
- 組織文化の変革は事業戦略と強く結びつくものです。ですから、どのような市場で、どのような製品・サービスで、どのように競争するのかという問いに対する明確な答えを用意する必要があります。
- 加えて、選択するビジネスはどのような組織文化が求められるのかを問い直す必要があります。例えば、事業サイクルが短い場合、組織文化も短いサイクルで物事を行うようになっている必要があります。
- 介入スタンス2.:技術的・構造的側面
- 製品・サービスをどのようにして生み出すか、そのために仕事をどのように設計するかは、組織文化に影響を与えます。昨今のDXという概念は、単に技術的側面だけでなく、従来の仕事に慣れ親しんできた人たちの慣行を変えていかなくてはならないという意味で、まさしく文化の変革が大きなテーマになります。逆説的にいえば、文化を変えようとすれば技術的・構造的側面をどのように設計する必要があるかを問うているのです。
- 介入スタンス3.:人的資源管理・能力開発
- 組織文化の変革に人的資源管理や人材開発は欠かせない要素です。例えば、優秀な人材をどのようにして組織が募集・選考・採用するか。業務目標設定・業績評価・報酬をどのように設計するか。キャリア開発・能力開発やストレスをどのように管理するかは、大きな課題です。
- 介入スタンス4.:ヒューマン・プロセス/関係性
- ヒューマン・プロセスの課題とは、コミュニケーションの仕方、問題解決の仕方、意思決定の仕方、影響関係(協働関係)の仕方、リーダーシップの取り方などが含まれます。このようなプロセスの変革には、対話という場を活用した深い内省と新しい行動の試みが求められます。
具体的介入方法には、さまざまな方法があります。以前のODメディアで既に紹介していますが、サティア・ナデラCEOになってからやったことは、マイクロソフトの組織文化の変革です。彼は、P.ドラッカーの「文化は戦略に勝る」という言葉を信奉しているようです。ナデラは、「Fixed Mindset」から「Growth Mindset」への転換という概念を好んで使っているようです。「Growth Mindset」は従来の考え方に縛られない行動であり、ナデラCEOの言葉をそのまま引用すると「社員一人ひとりが難題に立ち向かい、乗り越えようとすることで個々人が伸び、その結果、会社も伸びる」というMindsetであり行動です。ナデラCEOは、マイクロソフトの組織文化を変えるために、以下のような行動を選択しています。
- ウインドウズ10の公開時、ナデラCEOはケニアの小さな村でセレモニーに臨んだ。これまでは重要商品の発表はすべて米国でやってきた。
- マイクロソフトのトップは、これまで日英独など主要市場には毎年1回訪問するという決め事(プロトコル)があったが、それをしなくなった。「必要な時に必要なところに行く」という行動に変えた。
- ナデラCEOは「フレネミー(friendとenemyを合わせた造語)」という言葉が好きで、過去の競争相手とも手を組む。例えば、データベースでのオラクルとの相互接続。
(日本経済新聞2019年8月5日 核心 より引用)
文化変革には、リーダーの率先垂範がやはり大切であるという実例です。このような文化変革の方法を整理すると、一般的には12の方法にまとめられます。
【組織文化を変革する12の介入策】
- 協働して望ましい組織文化を明確にする
- 望ましい組織文化と現在の組織文化のギャップを査定する
- 組織文化変革に関する利害関係者の関与と影響の分析
- リーダーの行動と責務を再明確化する
- 新しい組織文化の意味することをあらゆる手段と機会を通してメンバーに伝える
- 大勢のグループを参加させる対話の機会を数多く設ける
- 大規模で、集中的な教育訓練
- 人々が自分の行動を振り返れるフィードバックプロセスを構築する
- 起業家精神が発揮できるよう必要な組織構造の変革を実施する
- 目標設定や評価といったマネジメントプロセスを整える
- 新しい組織文化を支える報酬制度を整える
- 必要であれば個人への介入を実施する
次回のODメディアでは、この12の介入策の詳細を見ていくことにします。(続く)
参考文献
「不連続の組織変革:D.ナドラー、R.ジョーンズ、A.ウォルトン」
「組織文化とリーダーシップ;E.H.シャイン」
この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。