組織開発(OD)からポジティブ組織開発(POD)へ-その7~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【68】~

~挑戦する人材をつくる~
企業の人材開発担当者からは「挑戦する人材を育成する」という期待や要望を聴くことがあります。という事は、挑戦する人材が足りないという事ですよね。これに関して、なるほど、というデータがあったので掲載します。
平成30年度 内閣府 若者意識調査 7か国比較(日本)
分野:我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 :社会規範
質問:他人に迷惑をかけなければ、何をしようと個人の自由 n各国約1,000
このデータは、さまざまな解釈ができると思います。以前のODメディアでも書きましたが、日本は共同体志向が強い文化を持った国です。ですから「他人に迷惑をかけなければ、何をしようと個人の自由」とは思わない人が日本は他国に比べて圧倒的に多いのでしょうね。それはそれで良い面と悪い面があるのでしょうが、コロナ禍での「外出自粛」なども日本の場合は同調圧力が掛かり、強制的な規制を掛けなくてもそれなりにやっているというのは、このデータが示す気質がそのまま出ているのかもしれません。
さて、挑戦するという事は、多かれ少なかれ「船を揺らすこと」になるわけです。それは、「安定と秩序」を重視している人からすると「迷惑」と受け止められることもあるわけです。挑戦する人材とは「示された線路の上を一生懸命走る」のではなく、「従来とは何か異なる目的と目標を掲げてそれを達成しようと実践している人材」です。それは、何への挑戦かと言えば「旧来のパラダイム/価値」への挑戦に他ならないのです。
挑戦する人材を育成するという事は、当事者の問題だけでなく、彼を取り巻く集団や組織の問題でもあります。会社でいえば人々の意識の中にある従来の規範や組織文化を逸脱することを許容できるかどうかが大切なんですね。
コロナ禍における政府と東京の自粛規制内容のせめぎ合いを見ても、緊急事態宣言は政府が出すにしてもその実行責任は自治体にあると聞いていたのに、やっぱり東京の主張は独断専行で暴走などと言われるのですね。政府という中央集権組織から見ると、それは許せないという事なんでしょうか。現場を信用していないのか、政府と自治体に信頼関係がないのか、何が原因なんでしょうね。まあ、今の政府に対する信頼関係が低下しているというのは実感としてありますけどね。
今回の政府と東京で起きていることは特別なことではなく、お互いけん制し合っているような関係が至る所で見られます。これじゃ、スピード感ある意思決定はできないし、いわゆる権威や権力に対する忖度が働き、波風が立つことはしないという意識が働くかもしれません。これを打破しなくては、挑戦する人材なんて育ちません。そして、挑戦する人材を個人の資質に期待してはならないのですよ。社会や組織全体が「挑戦する人材」を生み出すような価値観や仕組み、文化を醸成していく必要があります。
ポジティブ組織開発は単に心地よい人間志向の組織(QWL)を創造するのではなく、傑出した個人の育成につながる組織の原動力(ダイナミクス)を生み出すことにより、一瞬の組織整合性ではなく、変化対応力のある組織づくりをしていこうとするものです。平たく言えば、一人ひとりが成長する組織を創ることが、延いては組織の持続的成長に繋がっていくという、ある意味至極あたり前のことを目指しているとも言えます。昨今言われる「短期的視点での株主至上主義への反省」にもつながるのではないかと思います。
※この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株) 波多江嘉之です