ヨコ連動は大切だ~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-㉟~

~仕事はタテではなくヨコで進む~
ヨコ連動という言葉、特に大手の企業でよく聞きます。多分、中小企業でもそれは同じで、その場合は「コミュニケーション」が良くないというような表現になるんでしょうね。
組織は、便宜上仕事をよく似た集まりで括っています。いわゆる、機能別組織ですね。どのような組織構造にしようとも、第一線は機能別組織またはグループです。しかし、実際には仕事はヨコで進んでいますよね。
横で進むとは、例えば下記の図で示すような流れですね。
業務プロセスといったり、バリューチェーンといったりしていますが、多くの方は「そうそう」という感じだと思います。このヨコの流れがうまくいっているかどうかで「顧客への提供価値」が決まります。で、問題は「機能と機能との間にある隙間ないしは谷」ですね。
ある企業で営業が受けた案件に関して、関係部署間のコミュニケーションが不十分で、結果納期遅延でクレームという案件があり、トップからちゃんとコミュニケーションをしなさいという指示が出ました。よくあることですよね。
で、何をやったかというと「担当者レベルのコミュニケーション研修」です。まあ、やらないよりやった方がいいかもしれませんが、一番やらなければいけないのは「その案件の当事者が集まった問題解決ミーティング」の筈です。それも、担当者の集まりではなく「責任者である管理者も入った問題解決ミーティング」です。
往々にして組織はタテが強くなります。目標管理が強く機能していると、ついついタテ中心のマネジメントになります。また、目標管理の中では他部門との協力関係をその目標に入れることはほとんどなく、それもタテを強くする要因になります。実際に、レポートラインは直属の上司ですからね。つまりタテ。
こんな時こそ大規模討議集団方式のミーティングの出番ですよ。今回はその中でも2部門間の連携という課題を取り上げてみたいと思います。対立している2部門って結構多いですよね。例えば、営業とマーケティング、本社と現場という構図もあります。で、どうするか? オーガニゼーションミラー(組織の鏡)という方法があります。
オーガニゼーションミラーの前提は、人はその人の認知で行動するというものです。従って、お互いの認知を照らし合わせて、「私たち、あなたたちをこう思っているんだけど」「え、私たちそんな風に映っているの?」というようなことを表明しあうのです。そこから問題解決に持っていくという進め方です。具体的には次のようになります。
~組織の鏡:部門間関係改善の進め方~
1. 最初はお互いがお互いをどう見ているかのデータ交換です
(ア) あなたは相手の部門をどのように見ていますか。
(イ) あなたの部門は、相手の部門からどのように見られていると思いますか。
(ウ) あなた自身、あなたの部門をどのように見ていますか。
- データを交換します。
自分で自分を見ているデータ
(自分のウ) |
相手部門からの見られ方の予測
(自分のイ) |
相手部門からの見られ方
(相手のア) |
- お互いの見方について話し合います(知覚の修正)。
(ア) この段階では、お互い沈黙したり、う~~~と唸ったり、え~~~と驚いたり、なるほどねと妙に感心したりというさまざまな感情が湧いてきます。ここはじっくり時間を取りましょう。
(イ) そのうち誰かが「なんでそんな風に思うの?」と質問が出てきたりします。ここでは、しっかりと事実や出来事を話し合います。
- 問題点を明らかにし共有する。
(ア) 感情の発露や事実の確認が終わったら、次に行う事は問題点の共有化です。問題は、どちらかのチームにあるのではなく、その関係の在り方にあります。とても大事なことは、責任の所在はどこにあるのかという話にしないことです。「責任は」と言い出すとほとんどの場合互いに防衛が始まります。そうすると収拾がつきません。
- 問題の順位付けをする
(ア) 問題がリスト化されたら、どれから解決するか順位付けをします。重要度と緊急度の二つの視点から順位をつけます。そして、まず問題解決に取り組んでみるのは上位3つです。
- 問題解決の話し合いをします。
(ア) 2つの部門のミックスグループで、問題別に3グループで問題の解決についてどうすべきかを話し合います。
(イ) 話し合った結果を全体で共有します。
- 自部門のチームづくりを実施する
(ア) 解決案に基づき、自部門はどうしていくべきかを自部門メンバーで話し合います。
このプロセスで分かるように、いきなり仕組みの問題解決ではないという事です。最初に、認知をすり合わせ「感情的側面」についてお互いが分かり合うというステップを入れます。このステップを飛ばすと、多くの場合「自己防衛」が強くなり相手の責任を攻めるという姿勢になりがちです。仕組みをより良いものにしていくという問題解決は必要ですが、その前に関係者の認知を交換し、同じ土俵に乗るというプロセスはとても大切です。
※ この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。