自分事で考え行動する~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-㉛~

~自分の考え:哲学を持つことの大切さ~
今年の5月、日本経済新聞社会面に「偏差値が低い学校ほど伸び代がある」という記事がありました。この記事によると、偏差値が低いという事は能力がないという事ではなく、自分で考える機会を持たないまま大きくなった子供たちという事です。この記事に、ある大学での「就活指導」の話が載っていました。かいつまんで書くと以下のようなことです。
この大学、企業の採用基準枠からすると上位には来ない大学です。そこで、指導の先生が「なぜその会社に就職したいのか:Why」を徹底的に問い詰める。来る日も来る日も問い詰められ、最後は泣き出す学生もいる。ところが、これを繰り返していくうちに学生自身が自分自身のことを深く考えるようになり、何をしたいのか、だからどこに就職したいのかが明確になってくる。そういった学生は面接でもありきたりなことではなく、明確に自分の考えを述べるので、ほぼ全員が希望の会社に就職する。
この記事に出てくる先生は、「自分自身を徹底的に問い詰める」ということの大切さを言っているのです。つまり、当事者に哲学的思考(これ、この先生の言葉)を課しているわけです。哲学的思考がなくては厳しい世の中を生きてはいけないということを明確に教えているのです。やっぱり、徹底的に問い詰めるという事は大事なんですね。
かつて日本ライト級チャンピオン、東洋太平洋チャンピオンに輝いた元プロボクサーの坂本博之さん。幼少時代を過ごした児童養護施設でボクシングのテレビ中継を見て、プロボクサーを目指し、夢を叶え日本チャンピオンに輝きました。そんな坂本さんの生い立ちは虐待を受けて死んでしまうかもと思ったほど壮絶な子供時代だったそうです。この境遇を救ってくれたのが福岡県和白にある児童養護施設です。既に現役は引退しボクシングジムを経営されています。彼の座右の銘は「運命は自らの手で切り開くもの」だそうです。坂本さんは、現在、子供達を救うため「こころの青空基金」を設立し、児童養護施設の支援に尽力されています。
いやー、こんな事例を書くと「それって、精神論?」と言われそうですが、そうではなく確固とした哲学を持つことが大事ということです。
~存在意義を深く考える~
「自分事で考え行動する」「エンゲージメント」どちらの言葉や概念を使ってもいいですが、山あり谷ありの人生の中で成功するには「自分なりの哲学」「働くことについての意義」を明確に持っていることはとても大切なことです。実は、組織開発(OD)で最初に問い直すべきは、この存在意義です。
ポジティブ心理学が追求する健全な世界を表現する指標として「PERMA:パーマ」というものがあります。以下の5つがPERMAの内容です。
① Positive Emotions:ポジティブな感情
ストレスがあったとしてもそれとうまく付き合い、エネルギーに変える。
② Engagement または Flow:積極的な関わり
自分の活動や仕事に集中できている。
③ Relationships:柔軟な相互関係
お互いを理解したコミュニケーションがなされ、チームメンバーの協働関係が成り立っている。
④ Meaning:仕事の意義
仕事の意味や意義を共有し、目指す方向に向かって着実に進んでいる。
⑤ Achievement :達成への活動
目標にコミットメントし、責任をもって活動の実践がなされている。
ここにも、仕事の意義があるんですね。「あなたは、なぜこの仕事をやっているのか」「この職場は何のために存在するのか」「この会社が存在する意義はどこにあるのだろうか」こういったことを突き詰めみんなが納得した上で、じゃどうしたらそれが達成できるだろうか。と問うのが大切なのです。やっぱり借り物の哲学ではだめなんですね。職場でそんな対話をやってみますか。
※ この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。