アクティビティトラップに気をつけよう
アクティビティトラップの危険性
ビジネスの現場で私たちがよく目にするのが「アクティビティトラップ」という現象です。一見すると忙しく動いているように見えますが、実際には単なる「動いている状態」に埋没してしまっている状態のことを指します。多くの場合、この状態に陥っている本人は、自分がトラップにはまっていることに気づいていません。
より具体的に言えば、行動すること自体が目的となってしまい、本来必要な行動や本質的な取り組みができていない状態です。例えば、毎日多くの会議に参加しているものの、その会議で何が決まったのか、どのような価値が生まれたのかを振り返ることができない。あるいは、日々の業務に追われ、長期的な戦略や方向性について考える時間が全く取れていない。このような状況は、まさにアクティビティトラップの典型例と言えるでしょう。
このトラップの厄介な点は、私たち誰もが陥る可能性があることです。目の前の業務に夢中になりすぎてしまったり、あるいは本質的な課題に向き合うことを避けたくて、無意識のうちに自らトラップに飛び込んでしまうこともあります。特に、成果主義の強い組織や、スピードを重視する企業文化の中では、このトラップに陥りやすい環境が形成されやすいと言えます。
さらに、このトラップが危険な理由として、組織全体にネガティブな影響を及ぼす可能性があることが挙げられます。個人レベルでの生産性の低下だけでなく、チーム全体のモチベーションの低下、創造性の欠如、そして最終的には競争力の低下にもつながりかねません。
トラップを回避する実践的アプローチ
「考えるな、動け」という言葉をよく耳にしますが、この考え方には私は慎重的な立場です。確かに行動を起こさなければ何も始まりませんが、考えることなく行動に移すと、すぐにトラップに陥ってしまう危険性があるのです。特に、経験が豊富な社会人ほど、自分の経験則や過去の成功体験に基づいて「とりあえず動く」という選択をしがちです。
しかし、現代のビジネス環境は非常に複雑で、かつ急速に変化しています。過去の成功体験が必ずしも現在の課題解決に適用できるとは限りません。むしろ、時には立ち止まって状況を分析し、新しいアプローチを検討する必要があります。
では、どうすれば良いのでしょうか。私の考えでは、以下の2つの要素のバランスを取ることが重要です:
- 本質を考えることから逃げない
- まずは実際に行動してみる
この2つの思考を常に意識することが、アクティビティトラップを回避するカギとなります。本質を考えることは、時として不快で困難な作業かもしれません。しかし、それを避けることは、より大きな問題を将来に先送りすることにほかなりません。
重要なのが「実験的な思考」を持つことだと思います。これは、トライ&エラーを恐れない姿勢です。エラーが発生するということは、そこに明確な目的が存在するということです。事前に考えた本質や目的があってこそ、適格な検証が可能になります。エラーがあっても良いのです。検証があればよいのです。この思考パターンを習慣化することで、より効果的な行動が可能になるのです。
また、実験的思考には、もう一つ重要な側面があります。それは、失敗を学びの機会として捉える視点です。多くの場合、失敗を恐れるあまり、安全な選択肢ばかりを選んでしまい、結果としてアクティビティトラップに陥ってしまうことがあります。しかし、適切に管理された実験的アプローチであれば、失敗のリスクを最小限に抑えながら、新しい知見や改善のヒントを得ることができます。
アクティビティトラップを回避するためには、以下の3つのポイントを意識することが重要だと個人的には感じております。
- 行動自体が目的化しないよう注意を払う
- 思考と行動の適切なバランスを保つ
- 実験的な思考を積極的に取り入れる
このように意識的に取り組むことで、より本質的で価値のある成果を生み出すことができるはずです。ただし、これは一朝一夕では習慣化しませんし、個人だけで頑張るよりはやはりチームや組織の規範が大きく影響します。「本質は何か?」と考え始めたのに、上司から「つべこべ言わず動け」と言われたら、もちろん思考放棄につながります。日々の業務の中で、常に意識を向け、実践を重ねていく必要があります。
最後におススメなのは、定期的な振り返りの機会を設けることです。例えば、週に一度、自分の行動を振り返り、それが本当に価値を生み出しているのか、あるいはただの「活動」に終わっていないかを検証する時間を設けることをお勧めします。このような習慣づけにより、アクティビティトラップに陥るリスクを大幅に低減することができるように思います。