ファシリテーションは奥が深いし楽しいという話
ファシリテーションのゴールは、「最後の時間に発する問い」
今日は、ファシリテーションについて最近感じたことを深掘りしてみたいと思います。ファシリテーションの世界に身を置く中で、ある重要なことにふと気づきがありました。それは、ファシリテーションのゴールは、その時間の「最後の問い」(とのその答え)にあるのではないか、ということです。
一見、当たり前のように聞こえるかもしれません。しかし、実際のファシリテーションの現場では、この視点を常に保ち続けることが意外と難しいのです。なぜなら、ファシリテーションのプロセスは複雑で、多くの要素が絡み合っているからです。
もちろん事前に目的を設定しますし、そのためのタイムテーブルの設計もします。しかし多くのファシリテーター(ファシリテーターではなくても)感じるように、場は生成的です。ある日うまくいったり盛り上がった「問い」や「ツール・アクティビティ」が次の日には全く違う反応になることもあります。しらけているように見えた場が全然エネルギーを持っていたなんてこともあります。そしてそれは刻々と変化していきます。
そうした場を見ながらの対応をしていると、準備をしていた流れをどんどん変えていくことも当然必要になります。そうすると、当初の予定通りの問いで締めくくるのが良いとも場当たり的な流れで出てきた問いで締めくくるのも当然あまり良いとは言えません。
最後に投げる問い、およびそれに対する答えはその場の出口です。
例えば、「今日の議論を通じて、あなたが明日から実践したいことは何ですか?」という問いがあったとします。この問いは、参加者に具体的なアクションを考えさせ、セッションの学びを実践に結びつけることを目指しています。これらの出口は現実への入り口でもあります。
つまり、この最後の問いは、単なる締めくくりの言葉や感想を分かち合うだけではありません。それは、セッション全体の方向性を示す羅針盤なのです。ファシリテーターとして、この問いを念頭に置きながらセッションを進めることで、議論が脱線することを防ぎ、参加者全員が同じゴールに向かって進んでいくことができると思うのです。
だからこそ最後の振り返りやシェアの時間で、これは参加者に問いかけたい、考えたり感じたりしてほしいという最後のに投げる内容がとても大切なんだとふと感じたりしたのでした。
逆算的設計とアドリブ設計のバランス
「最後の問い」を活かすためには、やはり当たり前ですが、その問いから逆算してセッションを設計することが大切です。これは事前に設定されていた「大きな目的」がそのまま使われることもありますが、より具体的なシャープさを持った表現をもつ問いを使うべきこともあると思います。
例えば、チームビルディングのセッションを行うとすると、最後の問いを「今日の活動を通じて、チームとしてどのような強みを発見しましたか?」と設定したとします。この問いから逆算すると、セッションの中で以下のような要素を含める必要があることが分かります:
- 個人の強みを共有する時間
- チームで課題に取り組む協働作業
- お互いのフィードバックを行う機会
- チームの強みを分析し、まとめる時間
このように、最後の問いから逆算して設計することで、セッションの各要素がゴールに向かって有機的につながり、より効果的なファシリテーションが可能になるのです。
しかし上述のように、場は生成的です。
そのため、個人の強みの共有がうまく進まなかったりした場合は、また問いが変わるかもしれません。そしてその変わった問いがどうつながっていくかを見ながら、感じながら、最後の問いのブラッシュアップも必要な時もあるとおもいます。変えたり、追加したり、削除したりなどですね。
抽象と具体のバランス
また抽象と具体のバランス問題もありますね。ファシリテーションを設計する際、ゴールから考えることも確かに重要ですが、ゴールだけに焦点を当てると、しばしば抽象的になりすぎてしまう危険性があります。「チームの生産性を向上させる」や「創造的な解決策を見出す」といったゴールは、確かに立派ですが、具体的な行動に落とし込むのが難しいかもしれません。個人的にはこれでは抽象度が高すぎて、もっと具体的なイメージに翻訳する必要があるので、より具体的な問いをイメージすることが有効なのだと感じます。そこで重要になるのが、抽象的なゴールと具体的な「最後の問い」のバランスです。ゴールは大きな方向性を示し、「最後の問い」はそれを具体的な形に落とし込む役割を果たします。例えば:
- ゴール:チームの生産性を向上させる
- 最後の問い:「24時間以内に、あなたが実践したい(実践できる)新しい時間管理の方法は何ですか?」
このように、抽象と具体を組み合わせることで、参加者は大きな目標を理解しつつ、具体的なアクションにつなげやすくなるのかなと感じております。
拡散と収束のバランス
こう考えると拡散と収束のバランスも大事なのだと感じます。効果的なファシリテーションには、拡散的思考と収束的思考の両方が必要です。拡散的というのは生成的な場に合わせて問いをどんどん発生させてつなげていくこと。収束的というのは「最後の問い」を意識したうえでどのように束ね感を持たせていくのか、ということです。「最後の問い」を中心に据えたアプローチは、この両方のバランスを自然に意識して、組み込むこともできそうだなと感じています。
拡散的思考の段階では、想定にはなかったが、「今のこの話からはこんなことを考えるとよいのでは?」という発想を活かしていく。
収束的思考の段階では、それらの広がりを意識しながらどこに着地させるのかも「最後の問い」を活用して考えていく。
結局は「事前に考え抜いて、場に合わせる」態度が一番大切!
ここまで「最後の問い」の重要性についてあれこれ書いてきましたが、結局は優れたファシリテーターは、セッションの進行に応じて柔軟に対応する能力を持っています。生成的な場に合わせて「最後の問い」を固定的なものとして捉えるのではなく、セッションの流れに合わせて適宜調整することが大切です。
例えば、私が経験した事例で言うとチーム内の品質向上・改善を目的としたセッションで、当初は「効果的な業務プロセス」について話し合う予定でだったのですが、議論を進めていく中で、チーム内の品質への認識やそれを扱える関係性の問題や課題があることがなんとなく場に出てき始めました。このような場合では、最後の問いを「効果的な業務プロセスを実現するために何をすべきか」ということに焦点をおくよりも「そもそも品質向上・改善を表現するメタファーとして全員で共有できるものは何か」といったアプローチに変更すること適切でした。
このような柔軟性は、参加者のニーズに真摯に向き合い、より有意義なセッションを実現するために改めて大切なんだと感じた経験でした。
おまけ:「最後の問い」を活かすテクニック
おまけとしてこの記事を執筆するにあたって、AIに「最後の問い」をどうやって活かしたらいいか聞いてみました笑 いくつか紹介します。基本的な事柄も多いですが、とても大切ですね!
- セッション冒頭での共有:セッションの始めに「最後の問い」を参加者と共有することで、全員が同じゴールに向かって議論できます。
- 中間チェック:セッションの途中で「最後の問い」を再確認し、議論が軌道に乗っているか確認します。
- 個人の振り返り時間:セッションの終盤に、「最後の問い」について個人で考える時間を設けます。これにより、各参加者が自分なりの答えを見出す機会を提供できます。
- ペアやグループでのシェア:「最後の問い」に対する答えをペアやグループで共有することで、多様な視点を学び合うことができます。
- アクションプランの作成:「最後の問い」への答えを具体的なアクションプランに落とし込む時間を設けることで、学びを実践につなげやすくなります。
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