「大変だと感じる力」を維持する
習慣はともすれば惰性に陥る・・・
私たちは良くも悪くも習慣の生き物です。仕事でもプライベートでも一度習慣化したものはなかなか変化しません。これは時には強力な武器になります。〇〇するのが大事、と頭ではわかっていても、なかなか実践できませんが、それが毎日のルーティンの中に組み込まれているとむしろやるのが当たり前になって、継続されます。例えば読書であれば知識は自然に蓄積するでしょうし、運動であれば健康な体作りが自然にできる生活になるでしょう。そういう意味では習慣化はとても強力な武器になります。
しかし一方でこれは惰性と隣合わせになります。習慣化していることはある意味自動的に行われるので、気づきが鈍くなったり、ほかの人から見ると変なことなのに自分では変だと気づけなくなったりするということもありますね。例えば会社経営で言えば、ある領域での経費を自然に習慣で使っていますが、改めて見るとそれってこんなに使う必要があるの?ということがありますし、黙々と仕事をするやり方が不通だと感じていると「なんでそれってみんなに共有しないの?」「なんで報告しないの?」ということもあります。
リスクの多い事例では、明らかに問題が起きているのに、レポートしないのが当たり前になっていると、自分一人で処理するのが当然になってしまって、明らかに対処としておかしいのにそれがまかり通ってしまうことがあります。
惰性を生み出す「認知の枠組み」
このように習慣が惰性になってしまう背景をちょっと考えてみましたところ下記のような要素が絡んでいるように思います。
①認知の枠組みの固定化
私たちは、自分自身の固有のフィルターを通して物事を見ています。同じものを見てもAさんとBさんで解釈が違うのはこのためです。このフィルターを認知の枠組みと言ったりしますが、これは固定化しやすいという特徴があります。つまりそう簡単には変わらない、ということですね。
考えてみれば当たり前で、これがあるから私たちは目の前のことを楽に、スピーディに判断、処理できたりするわけですが、これが無意識的に固定化されてくると、それが当たり前になりすぎてほかの可能性が見えなくなります。
②集団思考・集団規範
またその当たり前が集団の中で形成されると、それがこの集団の中で規範となって、基本的には私たちは人間である以上そこに同調するように動いていきます。「赤信号みんなで渡れば怖くない」というように、普段はまじめで赤信号は必ず止まるのに、みんながわたるとなんとなく自分だけ止まるとこの集団での居心地が悪くなる、というやつです。集団が持っているこうした考え方に同調するような思考やバイアスのことを「集団思考」と言いますが、これが強く作用していると、当たり前から抜け出せなくなるのは容易に想像がつきますね。
「大変だと感じる力」を持ち続けよう!
ではどうすればいいのか? 個人で言えば、「大変だと感じる力」を維持すること、だとつくづく感じます。組織で言えば、「大変だと感じる力」を維持・強化する組織環境を作ること、でしょう。
今のところ、私が有効だと感じる具体的な方法は下記のようなやり方です。もしよければ試してみてください。※もちろんこれ以外のやり方もあると思いますので、よろしければ下記よりご連絡ください!
「大変だと感じる力」を維持する方法
①誰かの視点で考えること
自分以外の誰かを想定して、その誰かであればこの状態をどう見るか、という問いかけが有効です。
組織の社員であれば、
- 上司だったらどう見るか?
- 顧客だったらどう見るか?
- 社長だったらどう見るか?
経営者であれば
- 社員はどう見るか?
- 経営者仲間の〇〇さんはどう見るか?
- 尊敬する〇〇さんはどう見るか?
- 歴史上の偉人の〇〇だったらどう見るか?
などなど、意図的に見る視点を変えて、誰かになりきって、一度思考してみると意外なほど当たり前の視点を疑うアイディアが出てきます。おススメです。
②小さな違和感を大切にする
シンプルですが、強力です。私たちは生きている以上、大小いろいろな違和感を感じています。
「ここではこうするのが当たり前だろう」とは自動的に思っていても、少し立ち止まれば、「本当にこれでいいんだっけ?」ということも結構あります。こうした小さな違和感を大切にしてみるといいと思います。「おかしなことはおかしい」と思える感覚とその感覚を奨励するような関係性・心理的安全を作っていくことが重要だと感じます。
また小さな違和感を大切にする、ということで、
- 「誰かの言葉」と「自分の言葉」を分ける
ということも大切だと思います。誰かに言われてなんとなくそれらしく説明はできるけど、本当のところは自分もあまりよくわかっていない、ということってよくありませんか?(私はよくあります苦笑)
③認知バイアスの特徴を知る
私たちは人間である以上もともと持っている認知の枠組みもあります。これらを認知バイアスと言ってたくさんの種類が確認されていますが、そうしたことを知っておくだけでも惰性に陥るのを止めてくれることには役に立ちそうです。例えば有名なものに「正常性バイアス」というものがあります。何か問題や危険が起こっていても、「自分だけは大丈夫」という認知が働いてしまい、実際に危険を食らってしまうというバイアスです。災害時に逃げ遅れる方の要因の多くがこの正常性バイアスの影響だとも言わるようです。こうした特徴があるので大変な変化にももともと鈍感になりやすいクセが私たちにあるのだということを知っておくことも有効だと思います。
また自分の認知の枠組みのクセを知るという意味ではマインドフルネスの実践も有効だと思います。
個人的には、自分の内面で起こっていることに気づきやすくなる、という効果を実感しており、常に物事をありのままにとらえる癖をつけてくれるように思います。
本記事をお読みいただきありがとうございます。
もしこんなやり方も有効だ、というアイディアや記事に対するご質問やご意見がございましたら下記よりお気軽にご連絡ください。