• モメンタムをマネジメントする、原点回帰です ~ソモサン第298回 ~

モメンタムをマネジメントする、原点回帰です ~ソモサン第298回 ~

以前にもお話しさせて頂きましたが、個人的な概念として「仮面ライダーの法則」というのがあります。簡単に言えば仮面ライダーがライダージャンプをする時には必ず一旦しゃがまなければならないという単純な概念です。何故ならば彼は例え改造されたとしても地球上の人間だからです。改造人間の原点は1968年にタツノコプロが製作した「宇宙エース」に遡りますが、確かに彼はしゃがまなくても飛べます。でも彼は宇宙人が改造したのでこの限りではありません。これはウルトラマンやスーパーマンも然りです。しかし仮面ライダーはショッカーという地球上の悪の軍団による改造手術なのでやはり反物質や反重力の技術は持ち得ていなかったものと見られます。冗談はさておいてともかく仮面ライダーは一旦しゃがんで勢いをつけてから出ないとジャンプ出来ないのは確かです。

このしゃがむ行為、一般には「タメ」と称しますが、この法則は何も仮面ライダーに限ったことではなく、地球上の様々な物理現象にも適応されますし、これは心理現象にも通じるところがあります。そう「心の勢いづけ」にもこの「タメ」は重要になります。言い換えますと「モメンタム」という「力の状態」や「ライブリーアクト」という「躍動」においての「タメ」は「マインドフルネス」ということです。

何度もこの話はさせて頂いたのですが、「マインドフルネス」と「モメンタム」はセットであってこそ無駄のない動きになります。それは奇しくもライダージャンプの体と云えます。「タメ」があってこそ安定した躍動が生み出されるわけです。

そういった観点から見ますと、モメンタムを高めるためのワークも、このセット的な観点はより安定的でより確かな躍動を生み出すにはとても重要な観点になります。まずはマインドフルネスとしての土台固めがあって、その上で跳躍するのが最善なアプローチです。

ではしっかりとした土台はどうすれば生み出されるのでしょうか。ここで改めてマインドフルネスの概念について整理しておきましょう。言わずと知れたマインドフルネスは「心の充足」を生み出すアプローチですが、それには必ず二つの取り組みをする必要があります。一つは「カーム」、心の鎮静化です。平静化といっても良いでしょう。荒れ狂ったりネガティブになった心をまずは一旦凪いだ状態に導きます。この技法が「サマタ」と称される呼吸や姿勢を使った「集中する」瞑想法です。そしてカームの次に行うのが「チューニング」心の調整です。気分や気持ちを鎮静化したら今度は思いの中立化(ニュートラル化)を行います。この技法が「気づきを導く」瞑想と称される「ヴィパッサナー」瞑想です。瞑想法は両者が伴って初めてモメンタムを発する準備の体裁を生み出します。サマタだけだと一時凌ぎ的になりますし、ヴィパッサナーだけだと集中が足りず浅い気づきになります。どちらかだけではいずれも中途半端なジャンプしか得られません。そうなると返ってゆり戻しによって逆作用になる場合もありますから要注意です。土台はしっかりとした状態であるように心掛けましょう。

ところで自律的にマインドフルネスを導き出す技法が瞑想法だとすれば、他力的にマインドフルネスを導き出す技法はないのでしょうか。人によってはたこ壺的に自分で轍から抜け出せなくなっている人も多いと思います。また場合によって自分が蛸壺ということに気づかない状態の人もいらっしゃいます。こういった人を手助けするには、他力的なアプローチも大事になってきます。行動科学ではそういった研究の中で「催眠暗示」という技法を生み出しています。これは瞑想集中によって「変性意識状態」を生み出し、それによって気分を沈めるのと同様に、催眠という他発的な集中操作によってそれを行います。また更に瞑想法が「気付き」によって思いを調律するのと同様に「暗示」によって調律を行います。モメンタムマネジメントでは主にこの「催眠暗示」法を利用して他者のマインドフルネスを行なっていきます。

ところでマインドフルネスとモメンタムはちょうど硬貨の裏と表のように一体の関係にありますが、サマタ瞑想法のように坐禅などで穏やかに集中をさせるばかりではありません。「歩く瞑想」のように体を動かしながらの集中法もありますし、最初からモメンタムを取り入れた「歌う瞑想」や「踊る瞑想」のようにリズムワークによって集中させるアプローチもあります。ただこれらの技法はある種「陶酔」的な変性意識状態の現出ですので、「気付き」というヴィパッサナーが持つ「心の調整」はあまり含まれていないアプローチなので、モメンタムにおいても着火作用はあっても燃焼作用としては自律的な状態になりにくいので、注意が必要です。「気分は良いがどこか思いはすっきりとしない」といったところでしょうか。ただこの歌や踊りによる瞑想でも、あらかじめ自分が意図した思い、特に「心の調整」や「心の躍動」を「想起させる」ような仕掛けや工夫を事前に組み込んだ中での取り組みではヴィパッサナー的効果を伴った成果を出せる、むしろかなり高効果となってきます。

それが音楽によるアプローチです。楽曲が持つリズムやビート、メロディーなどで「変性意識状態」を生み出し、同時にその楽曲にある「歌詞」によって「気付き」を思い起こして「心の調律や躍動」を喚起させます。あらかじめ自分を内観し、自分が安定したり躍動するような状況や言葉を想起して、それに見合う楽曲を見つけ出し、また自分の気持ちを高揚させれる自分の波長にあったリズムやビートを持った音楽を見出しておいて、場やシーンに応じてそれを使って自分を鎮静したり鼓舞するのはセルフマネジメントとして最善のアプローチです。

私はXJapanの「紅」がモメンタムソングです。紅は最初に穏やかなメロディーワークで、まさにマインドフルンスのような出だしになっています。そして心が沈静化されたと感じた瞬間、「くれないだー」と歌手のトシが叫ぶと同時に激しいビートでモメンタムをハイにさせるテンポに音楽が移行し、心を一気に躍動させてくれます。皆さんも自分に合った楽曲やジャンルを持って、シーンに応じて使い分けると良いですよ。

最後に、書籍を出版して以来、もう2ヶ月以上が過ぎましたが、お陰様で未だに売れ続けているようで感謝するばかりです。その過程でAmazonさんの書評欄に少し気になるコメントが載りました。「着火モメンタム」とか「燃焼モメンタム」といった用語の他に、ブログを見ると「弁別モメンタム」という用語があるらしい。それぞれドーパミンと関連付いていて、欲求ドーパミン(加速作用)と制御ドーパミン(弁別作用)と繋がっているらしいが、どうも整理がつかず、もやもやしている」とのこと。

これは大変申し訳ありませんが、私の都合での混乱に尽きます。燃焼モメンタムは一時期「持続モメンタム」とも表現したり、作用が多岐に渡るのでなかなか整理できず、迷走していたりした時期がありました。出版に当たって「焚き火モデル」に合わせて最終的に「燃焼モメンタム」と名称を変えたのですが、ブログには研究過程がそのまま掲載されていますので紛らわしくなってしまったという楽屋話です。でも書籍をお読み頂いた上、ブログまで精読して頂いたこと本当に涙ものです。更には続編が楽しみという応援まで頂きました。ありがとうございます。尚「弁別」は着火した感情的な興奮が暴走しないように変性意識が無意識的に興奮を燃焼に方向づける本能的な働きで、燃焼モメンタムにブリッジを掛ける導入領域として燃焼モメンタムに組み込むことにしました。あまり色々なモメンタムがあっても混乱をきたすだけだと判断したわけです。ご了解頂けますと幸いに存じます。

今回は少し長くなりました。それでは次回もよろしくお願い申し上げます。

 

さて皆さんは「ソモサン」?