モメンタムをマネジメントする、燃焼編⑧ ソモサン第293回

人は何故恫喝したり、威圧的に接するのでしょうか。私的にはそういった人は「人との関係に自信がなく、更に回避動機(自己保身)から執行に拘るから」と捉えています。もちろん人によっては幼少から価値観として仕込まれた「権力欲求」に反して自分の意に対象の動きがそぐわないから感情的になるといった場合もありますが、こういったバイアス的な「自分は偉いのだ」といった「意図的な怒り」よりも「服従してくれないと自分が困る」といった「反射的な怒り」による態度の人の方が圧倒的に多いようです。

この「服従してくれないと自分が困る」という組織行動的な心理は激情的で高圧な態度ばかりとは限りません。最も多いのは「自由意志」の剝奪的な言動です。例えば、最初に自分の意見をとうとうと述べた後で、「それでいいな」と念押ししてくる上司とか、「それでどうだろうか」といった一見自由意思を尊重したかのような演出をかける上司です。無論こんなやり方は、意見の多様性を封じるだけでなく、あとで何か起きたときに、上司が「君もあの場にいたんだから、そのときに言えばよかったじゃないか」と言えるようにするためのものでしかありません。

心理的安全性とは、集団に所属する人全員がお互いを信用し、自由である状態を云います。それは参画している全員が「自己選択、自己決定、自己責任」を負え、その土壌の上にお互いを配慮して今ここに集中できる場があることです。ある意味「自利利他」の状態が全員に行き届いた場であるといったところです。自分の意思や動きが「ロール」ではなく、あるがままの自分で表出出来る状態になっており、それをお互いが受容し、認容できてこそ今ここへの集中は生まれてきます。そして目的へのコミットもその履行も、前提は集中の度合いによって計られます。

ではどうすればそういった空気や場を創出、演出できるのでしょう。最も大事なのは、「言葉を投げかけるのではなく、気持ちを注入する」ということです。それには、

 

①部下に対して評価として褒めるのでなく、感謝すること

部下に「自分には価値がある、自分は有益であり貢献が出来る」、平たく言えば「自分は人の役に立っている」と思わすこと

③部下に「ありのままの自分を受け入れてくれる」と思わすこと。

 

④自分も部下も横の関係をしっかり築き上げること

⑤何よりも前向きに他者の価値を認めること

が大前提になります。もう少し具体的に進めてみましょう。

例えば、会議の場に自分とは違うものの見方をする人がいるとわかったら、次に必要となるのは「関心を示すこと」です。それには、その人に見えていて自分には見えていないものや、自分とは違う考えに対して関心を持つように意識を集中してみましょう。私たちは高度成長期以来、基本精神として身体に組み込まれたのは、「まずは自分の立場を守る」という受け身の反応でした。それはあくまでも量産を前提として、ルーチンを尊びすべてに間違いがなく滞りがなく物事を進めるということが至上命題であったからです。それは今でも時と場合によってはそうする必要もありますが、変革期にある環境では、何をおいても創造性が必須になってきます。その環境下では、まずリーダーの心理や思考として描いておかなければならないのは、「立場を守ることよりも、好奇心を優位に立たせて、とにかくこれまでと違った動きを起こす」ことになります。当然その中には、リーダーとして前例が大前提になっている自分の考えを押しつけずに部下に関心を示すという姿勢として、「自分の発言は後回しにする」ことも含まれています。中でも会社組織であれば、同調圧力ではなく、組織協調としての忖度的に、社員は立場が上の人と意見を合わせようとするものなので、社内での立場が高い人ほど、この姿勢を軽視してはいけません。締めとして最後に口を開くのは、「リーダーの威厳を証明するためではありません」。ほかの人々に自由に発言させた後に「横の関係を調整し纏める」ためです。そこに自分の意思を入れ込んだり、混ぜ込むことは絶対に慎むべきです。

この「チーム内での対人的な横関係のあり方」は「チーム集中力」というチームとしてのモメンタムの在り方に強い影響を及ぼします。では「チーム集中力」とは一体どういった存在なのでしょうか。この話につきましては、だいぶん紙面も押してきましたので、次回に持ち越しにさせて頂けますと幸いに存じます。

ではここからはゴールデンウィーク前に取り上げていた命題の続きと行きましょう。タイプ別のモメンタム、特に燃焼モメンタムをアップするためのアプローチについてです。休み前は四つの象限に分類される情報収集と情報処理や判断のパターンとその特徴をご紹介させて頂きました。今回は更にそこに感覚優位性を加えたマネジメントアプローチについてご紹介して行くことにします。

これも以前に一度ご紹介させて頂いていますが、感覚優位性には、

「見て分かる」視覚タイプ、

「説明を聞いて分かる」聴覚タイプ、

「やって見て分かる」体感覚タイプ

があります。そしてここではもう一つ、主に「聞く」というアナログの部類ではではありますが、事実タイプや思考タイプの領域の方に傾斜したタイプとして「説明を読んで分かる」読解タイプが加わって四つのタイプが区分されます。これらのタイプは、それぞれ「「見せて説明することが有効」「話して説明することが有効」「読ませて説明することが有効」そして「一緒にやってみることが有効」といったようにタイプに合わせたアプローチがより効果的に相手のモメンタムをアップさせることに繋がります。具体的には、「これを見てごらん」「グラフや表を確かめて」とか「これがお客様の声だよ」「まずは君の話を十分に聞かせてくれよ」、或いは「これがレポートだよ」「資料が示しているよね」、「まあやってみれば分かるよ」「まずは感じてみようか」といった按配にアプローチしていくと感情が前向きになって、勢いづいて来出します。

さらに判断基準としてのタイプとしては、課題や技術重視か、対人関係重視か、集団重視か、ルール重視か、といったものや、個人(自責)型か関連(他責)型かといったクライテリア(価値基準)がありますが、それをここで掲載しますとこれまた大変な紙面になりますので、それはまた追い追いということにさせて頂ければ幸いです。ということで今回はこれくらいにさせて頂きます。

それでは次回もよろしくお願い申し上げます。

 

さて皆さんは「ソモサン」?