• モメンタムマネジメント:モメンタムが発動しやすい素地を作る ソモサン第292回

モメンタムマネジメント:モメンタムが発動しやすい素地を作る ソモサン第292回

皆さん、ゴールデン・ウィークはいかがお過ごしでしたでしょうか。私は少し英気を養うべく、田舎に行って好きなおいしいものを食べてきました。ところでこのおいしいものですが、おいしいということは少なからずカロリーと直結しており、ということは肥満と直結しているということになります。これはモメンタムという概念とは切っても切り離せない世界観を持っています。

ここでもう一度振り返りましょう。モメンタムとは「やる気」といった意識ではなく、「動き」を表しています。これまでの動機づけ理論は「やる気」という「意識」の高揚から「行動」を喚起させるアプローチでした。しかし現実の人の行動は、「意識」が「行動」を導くのではなく、「行動」が「意識」を啓発するということが脳科学などによって分かってきました。そう、まずは「行動」ありきなのです。最初は意味のない行動が意識に作用し、その意識が新たに行動を加速させるのが人の動きということです。行動理論では、その動きを条件反射的な「報酬理論」に繋げて、「癖付け」を奨励するアプローチをとりますが、モメンタムは「報酬」以上に人が潜在させている「目的意識」を軸にして「認知反応」からのフィードバックとして行動をブースター的に喚起させるアプローチをとっています。

ともあれ最初のきっかけは他発的な動機であっても無意識的な行動を惹起させることがモメンタムの考え方です。それは人からのエネルギー充填もありますし、自ら感情を揺さぶることから摩擦熱によるエネルギー発動を促すアプローチもあります。何れにせよ出だしは何らかの体動(これには各感覚器官の動きも含みます)感情的な動きを起こすことです。

動きにおいて大事になるのは「身の軽さ」です。身体の期間は全て繋がっていますから、どの器官においても疾患や脆弱化といった歪みがあると、それは他の器官に影響してきます。その最たるものが肥満というのは皆さまも周知されるところです。ということで休み明けということもありまして、今回は「モメンタム」ワークの準備としての「マインドフルネス」ならぬ、更にそのマインドフルネスを充実させる「フィジカルフルネス」のワークをご紹介しましょう。

厚生労働省による「労働安全衛生調査」によれば、不安や悩み、ストレスを感じているビジネスマンは全体の80%を超えていると云われています。皆さんもご存じの通り、ストレスを溜めると太ります。その理由の一つは飲食がストレスの発散口になっていることです。でもそれよりも大きい理由なのは、腹横筋が飲食によって機能不全に陥ってしまうということです。

筋肉の動きは運動神経によってコントロールされているのですが、自律神経の影響も受けています。自律神経には交感神経と副交感神経がありますが、ストレス時には交感神経が優位になりやすいということが分かっています。そして腹横筋のような人のインナー筋は交感神経が優位だと働き難いということも分かっています。腹横筋が働かないと内臓脂肪が増えてきます。そう肥満が増進します。そして内臓脂肪の超過はやがて生活習慣病を引き起こします。脂肪細胞は悪玉ホルモンを頻出させるからです。その悪玉ホルモンの頻出は、フィードバックをもって副交感神経をますます働き辛くさせるということを生じさせ、身体全体をだるくさせてどんどんとやる気を奪い去ります。そうしてストレスの増進を加速化させていきます。結果マインドフルネスどころかマインドレスを導き出し、モメンタムの発動に蓋をする状態を引き起こします。そうです。モメンタムにとって肥満は鬼門なわけです。

ではどうすればそういった状態を解消できるでしょうか。端的に云えば肥満を解消することです。少し具体的に流れを追ってみることにしましょう。まず最初にアプローチするのは、副交感神経を優位な状態に導くことです。

副交感神経を優位にする最も有効な手段はマインドフルネスの呼吸法です。それにはズボラ瞑想法における姿勢や呼吸法のアプローチがドンピシャになります。そして更にインナー筋を鍛えたり内臓脂肪を減らすには、ズボラ瞑想法における「ズボラ運動」が効果的になります。ズボラ運動とは腹筋のようなハードな運動ではなく、有酸素運動となるソフトな運動のことです。例えば軽いウォーキングだったり、買い物や掃除でとにかくゆっくりと長時間動くことがそれになります。今回は何時でもできるズボラ運動を幾つかご紹介しておきましょう。

①とにかく坐骨で座る。そして姿勢を竹の様にピンとさせる動きを意識する。

思いついたら背伸びをする。そして肩甲骨を立てて寄せる。

③食事はとにかくゆっくりと食べる。一口で30回以上噛む。また一口ごとに箸を置く。

④1日に10分しゃがむ。出来れば立ったり座ったりを出来る限りでよいのでゆっくりと繰り返す。

⑤寝る前に横になったら、一旦グッと力んでから寝る。

⑥一分間ハンドバスをする。ハンドバスとは、洗面器に手を入れて温めるということです。五分すれば入浴に近い効果が得られます。

⑦休日には必ず予定をいれる。これは出来る限り毎日動く状態を演出するというアプローチです。

もう一つ動きのアプローチをご紹介いたしましょう。それは、単純に表現的に「笑う」という動作をするということです。これは別に可笑しくなくても構いません。「型」として笑うわけです。日本古来の狂言では「型」としての笑いを重視しています。受け答えに「わーあはっはっはっは」とオーバーアクションなくらいの動作で笑いを型として行うということが組み込まれています。日本の芸能は様式美の世界です。感情を動作で表します。その動作が収斂的に結実したのが「型」です。まさに感情が動きを作るように、動きが感情を生み出すべく「型」としてプログラミング化したのが「能」であり「狂言」の世界、また「舞踊」の世界です。

狂言師の野村萬斎氏は、「西洋伝来の現代演劇は感情から入るが、古典的日本芸能は型から入る。動作から感情を誘発する。そうして聴取者の想像力を醸成させ、共感の世界を生み出す」と仰っています。

可笑しくなくても型として笑っている内に、次第に何か可笑しくなってくる。そして笑いは周りに波のように連鎖していく、というのは皆さんの中にも体感した人は大勢いらっしゃると思います。

「型として笑う」。これもフィジカルフルネスの簡単なアプローチになります。皆さんも「科学的」云々の前に、一つ実践してみて下さい。そして「科学的」という言葉で防衛している自分の感情に「ガツンと一撃」を入れてみて下さいますと幸いに思います。

それでは次回もよろしくお願い申し上げます。

 

さて皆さんは「ソモサン」?