ポジティブ組織を創造するカギはポジティブマネジメント-ソモサン第196回-
ショートソモサン①:権威主義によるネガティブマネジメントの横行
皆さんおはようございます。
いきなりですが、前回の練習問題はいかがだったでしょうか。
<前回の練習問題>
下記の場合に弁護士の方に期待われているパワーは何か?
「会社内でハラスメントがあるという噂があるので、調べたのですが今一つその証拠が見つかりません。そこで今後そう云うことが起こらないように、法律の専門家である弁護士に頼んで勉強会を実施する事にしました。」
お察しの通り、この場合間違いなく期待されているのは弁護士が持つ専門力に基づいた公権力(正当性)です。この中には副次的に法律という罰則を伴った強制力(懲罰性)も内在しています。
でも皆さんお気を付けください。この状況を良く考察してみると社内ハラスメントはあくまでも「噂」です。弁護士ひいては法律は何らかの構成要件が満たされないと作動しません。つまり噂段階では何らのエビデンスもなく、それは公権としての足掛かりがないということであり、即ち現実的な抑止力とはならないのです。ですからこの場合は、弁護士という社会的認知を元にあくまでも一般の方々が持つ公権的な威力を、錯誤的に利用することによって、今後に対しての予防策を講じたということになります。確かに弁護士という肩書きは、私達コンサルタントとは違って法の持つ懲罰力を扱えるという公的な権限を有しているという一般的な認知がありますから、ここで弁護士さんを活用するというのはとても有効な手段の一つであるといえます。
ところでここでいう錯誤で要注意なのは、弁護士のような専門力を信奉する風潮です。特に日本の場合これが強いですね。でも専門家が全てにおいて専門力を持っているわけではないという現実もあります。例えば弁護士は法律関係においての専門力は絶大ですが、それ以外においては全く無知蒙昧な場合もある、ということです。昨今弁護士出身で代議士になる方が一杯いらっしゃる様ですが、弁護士だからといって政治に長けているわけでも、知力が高いからといってその意志が高邁だというわけでもありません。その点は見極める必要がありますね。医者も誤診をします。この点は日本人は権威主義的な思想観念を利用され、すぐにそこにつけ込まれてしまうので、皆さんもご注意なさって下さい。
これはテレビなどのコメンテーターが典型と言えます。モーニングショーなどでしたり顔に何でもかんでもコメントする人が沢山いますが、そんなに貴方は万能なのか、と奇異に感じることが多々あります。専門性とはそんなに幅広く身に付けられるものではありません。迂闊に信じてはいけません。
「専門力があっての地位力」なのですが、「地位力あっての専門力」というように専門性という価値を集団主義の中で濫用してしまうのが権威主義の盲点です。まあやる方もやる方ですが、そういった人やマスコミを許容している大衆も大衆といったところでしょうか。バイアスの真骨頂です。人は集団主義に埋もれていると多勢に無勢で何も考えなくなっていきます。成長へ向けての問題解決よりも集団関係の維持に向けてしか思考が働かなくなってしまいます。
集団主義の最も顕著な特徴はトガリをなくして全体平均の状態を求めることです。そのため目立つことを嫌います。そのため集団内の行動は付和雷同が基本になります。すると同時にモノの見方が減点評価中心になっていきます。そしてそういった集団内での考え方は、何かをやって下手な評価をされるくらいならば、何もしないでゼロ評価の方がマシという風になってしまいます。
面白いのは、そうは言っても人の本性には帰属欲求と同時に影響欲求があるわけで、どうしても人間関係の中で支配-被支配に向けての感情の方も蠢いてきます。抑圧されればされるほどその感情は強くなってきます。特に被支配的状態では、劣等感の強い人はそれが倍加してきます。そしてその代償を欲し始めます。そのような状況下で台頭してくるのが年功序列の考え方です。これは実力の有無や能力の有無に関わらず存在する、集団維持のための忠誠心や経験的技能向上を前提とした村社会特有の優劣意識です。日本は国策として儒教を刷り込んだ故にそれがより強く刻み込まれています。それにしても10代までならば社会環境的に受身な立場なのでいざ知らず、それを絶対的価値観の如く振りかざす低レベルな人がとても多いように感じます。実力がなく頭が悪い人ほど、その劣等感を埋めるが如く年功序列意識を振り翳します。日本の社会では生産性に依拠するビジネス組織においても、こういった未だに意味の分からない上下意識が成長の阻害の原因になっています。
言わずと知れた孟子が言った「長幼の序」とはあくまでも一日の長に対して下が上を敬うという社会の平穏を保つ為の一つの教えであって、上が強いたり枠嵌める教えではありません。まして努力もしない愚か者に対し、その個人的欲求を満たすために有能なものを士気低下させたり生産性を阻害させるための教えでないことは間違いのないことです。しかし現実はこういった劣等感に根差した愚か者が、意味のない年齢や勤続年数によって有能な人を見下したりタメ口を効くといった現象は後を立ちませんし、自分の地位を正当化する老害が組織を疲弊させているのが日本の組織の特徴になっています。
こういった人達による組織マネジメントが横行し、その頑迷なガバナンスによって、知恵と創造による付加価値的なサービスとそれを支えるソフトウエアが世界のビジネスの中心へと移っていったにも関わらず、社会構造的にも年功的な土建屋(下請け)構造から離れられないセンスの日本社会は、企業的能力主義は台頭せず、今後も競争力は付かないことは自明の理と言えるでしょう。
このことは例えばこれまでの経済の右肩上がりを前提とした、量産(経験的生産性向上)による「安くて良い品」思考ではジリ貧になっている中、リスクを負ってでも高付加価値で成長の見込まれる製品開拓へのチャレンジを続けていかないといけないという現実下において、中途半端に豊かになり現状維持を基調とした官僚的な仕事思考になってしまっている老害的なガバナンスによる経済の低迷が助実に物語っているところです。
これこそがネガティブ・マネジメントによるネガティブ社会の象徴と言えます。もしも日本の企業が将来的にグローバル競争の中で生き残りたいのであれば、まずは社会の思想や風潮をポジティブ化していく必要があります。少なくともビジネスにおいて組織を活力ある状態にして、創造的に導いて行きたいのであれば、少なくとも自組織だけは組織意識をポジティブ状態に変容していく必要があります。GAFAと呼ばれるアメリカの最先端の活性的な企業は、何においても組織の活性化を維持させることに執心していることは間違いのない事実です。その為に組織のポジティブ化に余念がありません。
ショートソモサン②:いま必要なマネジメントの焦点は何か?〜っポジティブマネジメント〜
組織をポジティブ化するには、制度や意識、風土を全てポジティブな流れの状態にして行かなくてはなりません。それがポジティブ・マネジメントです。
制度とは組織の指揮系統、報連相の様な情報系統の流れをスムースにし、様々な影響力が上下左右にポジティブに流れ、それによって組織の各部署が活性する状態を作り出すためのものです。
例えばその一つが人事制度のポジティブ化です。組織の動きをポジティブ化し、活性させるには、少なくとも組織内が加点評価で、ともかく何かを提案すれば評価され、失敗しても捲土重来される。そして何も提案・実行しないと評価されないといった人事制度にしないといけません。何もしないのが、現状維持が正当化される年功主義などは許してなりません。そして常に活性した組織状況が維持されるように、つまり小さな変化に常に対応できるビビットな影響力系統(パワーフロー)が維持されるように、ポジティブを前提としたマネジメントが欠かせません。
そして所属員全員がポジティブな意識や感情を持続出来る様にアプローチしてこそ、創造的で行動的な組織行動が生み出されるという当たり前の状態を演出していくことも絶対条件になります。それもポジティブなマネジメント如何で決まります。組織内にポジティブな感情を生み出すのはマネジャーの先遣事項です。
それを担うマネジャーこそ、ポジティブマネジャーです。企業はポジティブマネジャーの養成に苦心するのがこれからの成長の礎となることは間違いです。
組織運営におけるポジティブパワーの構築と維持、そして組織メンバーのポジティブ感情の高揚と演出。これが出来るマネジャーの存在。これを生み出せるか否かがこれからの経営者の最重要課題であると私は確信しています。
組織をポジティブ化し、活性させるマネジャー。私はこれをポジティブマネジャーと呼んでいます。そしてそういったマネジャーを養成しつつ、組織をポジティブ風土に醸成していく経営を、私はポジティブマネジメントと称しています。
これを作り出す技法こそがボンズ・アプローチなのです。
JoyBizでは間も無く「ポジティブマネジャー」という名称とともに、組織おける「ポジティブマネジメント」の開発を行うプログラムをリリースします。アプローチ法はボンズ法です。そしてそこに新たに「ポジティブ・パワー・マネジメント」の考えやアプローチ技法が加わってきます。
ショートソモサン③:組織やチームは「パワー」で成り立っている
今回は少しこのポジティブ・パワーについて触れておきましょう。
ポジティブ・パワーとは「人が進んで影響されたいと認ずる力」のことです。「パワー理論」においては、「当然従うべき」と認ずる「公権力」を中立として、「専門力」「情報力」「同一視力(人間力)」がそれに値します。一方で「従わざるを得ない」或いは「仕方なく従う」影響力として「報酬力」「関係(コネ)力」「懲罰力」がありますが、これらの影響力はネガティブ・パワーということになります。しかしそもそも影響力というのは相手がそれをどの様に受け止めるかがポイントであって、報酬力も関係力も時には懲罰力も絶対的にネガティブなのではありません。使い方次第です。成熟性の高い人であれば専門力や情報力で動機付けされるでしょうが、成熟性の低い人に対しては、報酬力や関係力が求められることになります。時には懲罰力も必要悪になります。大事なのはパワーが有効に活用されることです。パワーが有効に活用されている状態をポジティブ・パワーと称します。
ではパワーとはどういった存在なのでしょうか。パワーというのは例えばダムに満々と蓄えられる水のようなもので、大切なのはその水をどのように行使するかの方が大事です。灌漑に使うのか、発電に使うのか、はたまた洪水とするのか。こういった行使の方法がリーダーシップの本質になります。つまりパワーあってのリーダーシップということです。ですからパワー自体を持ってポジティブとかネガティブとかを語るのはナンセンスということです。ポジネガはリーダーシップの使い方との複合で生み出されるというのがポイントです。それよりも、ここで押さえておかなければならないのは、パワーがなければ何も出来ないということです。パワー自体はポジティブ的であろうがネガティブ的であろうが多く持っていた方が良いということです。
パワーを得るには、まず
- リソースを獲得する。
具体例:予算と人事を掌握する。情報を獲得する。有力者の後ろ盾を得る。
- 人脈を作る。
具体例:組織内外に人的なネットワークを作る。
- ふるまいと話し方を印象付けける。
具体例:権力を印象付けるふるまいと話し方を身に着ける。ときには、怒りを表す。
4 .評判を高めるよう努力する。
具体例:理想の自分のイメージを持ち、そのようにふるまうことによって現実に近づく。外見に気を配る。
といったことが考えられます。
ショートソモサン④;ポジティブパワーフロー事始め
ポジティブ・パワーはこの様にして蓄積したパワーを有効に活用するわけですが、具体的にはどういった動きをすることなのでしょうか。
その一つは組織内で指示や統制や報連相といった神経系統がスムース(有効)に流れるように流れを整流させることです。企業にとってこれはまずルール(規定)化しておく必要があります。組織図や職務分掌、職務権限などがそれに値します。皆さんの中で「当たり前だろう」という声が聞こえてきます。でも恐ろしいくらいにそれが整備されていない組織は五万とあります。また形骸的に作っていてもそれが構成員に全く理解されていない、告知もされていない組織となるとその数倍に及びます。また作った制度や規定が現在の環境下において有効に働く内容になっていない、それ以上に戦略的な意図とかけ離れたものになっている組織となると目に余る惨状です。それを正す作業がポジティブ・パワー・マネジメントの一つです。
そして幾らしっかりとした約束事を作ってもそれが正しく運用されていなければ、これまたパワーはネガティブな流れになっていきます。例えば幾ら専門性に長けていても情報性に長けていてもその内容が正しく伝わらなければ何にもなりませんし、正しいところに流れなければこれまた何にもなりません。私の知る限りほぼ全ての組織で、せっかく素晴らしい専門知識や俊敏で生々しい情報を手にしていても、それが必要な相手に伝わっていなかったり、正しく伝わっていない状態にあります。情報が遅いならまだしも、情報が欠けていたり、歪んでいたり、抽象的で理解不能だったりとか、事実と意見(推論)が混ざっていたり、忖度で意図的に歪めていたり、精査もせずに受け取っていたりと、まあ専門性や情報性といった存在そのものがポジティブなパワーですら有効に作用する状況にありません。そして意図せず、無意識に報酬や懲罰に導かれたり、単にコネやカリスマに釣られて情報が漏れたり、操作されたりとパワーがネガティブに作用して組織に非生産的な状況を生み出しています。
またパワーの発揮の仕方も下手くそなマネジャーがたくさんいます。元々論理的世界はクリティカル(批評的)と言われるように感情的にはネガティブな力を内在しています。そのために意図していないと論理的な交流や思考は徐々にネガティブな感情に侵され始めます。ですから論理を押し進める時には意図的に感情はポジティブに演出する必要があります。こういった道理を弁えないマネジャーが至る所にいるのです。そして止せばいいのに物言いをネガティブにして、ただでさえネガティブな論理的会話を更にネガティブに煽るのです。そうして「私はあのリーダーの言うことは分かるし理解もできるが、癪に触るし嫌いだから動かない」といったネガティブ・パワー満載の状態を生み出すのです。物事を論理的に進めようとするならば、ポジティブ感情の演出が必須です。これもポジティブ・パワー・マネジメントの一つなのです。昔から「文武両道」とか「文武不岐」と言いますが、一流の学校程それを大事にするのは、感情的にネガティブになりがちな文をより極めるにはポジティブとなる武を同時に極めてバランスが取れる様になれ、という人間づくりにおいて、非常に素晴らしい格言だからです。
因みに人をある意味戒め的に規律させるにおいて、ネガティブ感情を役立てる場合、それは単純に論理的に詰めれば良いだけです。そこに感情的なネガティブを加える必要はさほどないのです。無論成熟性の低い人は論理自体が解らないので、ネガティブ的なパワーを噛み合わせるのは有効な手段の一つとは言えるのも確かです。でもそれもマネジャーがネガティブ感情的にアプローチするというのとは異なります。面白いのは、寧ろそういった時ほどボンズ・アプローチのようなポジティブ感情を喚起するアプローチを行う方がよりインパクト的には有効なのです。
何にせよ日本人は集団主義の影響もあってパワーの使い方、特にポジティブ・パワーの発揮が稚拙です。そしてそれが組織の生産性を大きく減退させているのです。日本の組織はもっとパワーの有効活用、ポジティブ・パワー・マネジメントの考え方や手法をマネジャーの能力として開発することが重要です。
弊社の「ポジティブマネジャー」におけるポジティブ・パワー・マネジメントの開発に関しては、現在2社ほどで実践させて頂いております。どちらも家業経営から企業経営に転嫁する段階で避けれない課題になっています。
さて、「ポジティブマネジャー」プログラムですが、プログラムの全容は徐々にご紹介させていただいていくとして、7月にはそれについてのセミナーを実施する予定しています。これはJoyBIz14年の集大成的なプログラムの完成です。是非注目していただけますと幸いに存じます。
次回は改めて「ポジティブマネジャー」についてご紹介させていただく予定です。皆さんも是非ポジティブマネジャーに変心して、シン・ウルトラマンのように組織に巣食う年功意識だけで生きているような何もしないネガティブ禍威獣を倒して、自組織を未来に挑戦的なポジティブ組織にして下さい。
そうトップガンのマーベリックのように成長と変化に年は関係ありません。ポジティブマネジャーとはまさにマーベリック(異端者)の様なマネジャーなのですから。ポジティブに行きましょう。
それでは引き続き次回も何卒よろしくお願い申し上げます。
さて皆さんは「ソモサン」?