• コンパッションクライメットートをファシリテートしていく【組織道の実践】ソモサン第171回(1)

コンパッションクライメットートをファシリテートしていく【組織道の実践】ソモサン第171回(1)

本ブログは5部構成です。

<この記事の全体構成>

(1)成果を生み出す「2つ」の切り口とは何か? →今のページ

(2)プロセスを良くしようと思ったときに何を見ますか? (近日公開)

(3)ウツ傾向の人がプロセスにどんな影響を与えるのか? (近日公開)

(4)この人は「被害者」か「加害者」か? (近日公開)

(5)プロセスにあだなす「加害者」か、プロセスに押しつぶされる「被害者」かをどのように見分けるのか? プロセス理解力を鍛える (近日公開)

ショートソモサン(1)成果を生み出す「2つ」の切り口とは何か?

皆さん、おはようございます。

先週前職の大先輩から電話が掛かってきました。何年振りだろうと思いながら「どうしました」と尋ねると当時の専務との話題の中で、前職の会社の最も「ウリ」であり、創業者にとっての差別化の基点であった「プロセス」という技術が徐々に出来なくなり、会社が衰退し始めているとのことでした。

その方からすれば「80歳近い年になっても未だに出番要請があるのは果たして好ましいことか」ということでしょう。そんな流れから「私(恩田)が「プロセス」というものを扱うことが出来る後継だと目していたが、辞めてしまった」という話題になったとのこと。有難いやら、面映いやら。ということで今回は組織道の心臓部であり、コンパッションクライメットを生み出す原動力になる「プロセス」なる存在についてご紹介して行きたいと思います。

コンサルタントというビジネスの機能は、「クライアントに対し、課題の発見・解決を支援すること」ですが、アプローチにおいて大きく2つのタイプに分かれます。

1つ目のタイプが「コンテンツ・コンサルティング」です。これは自らが持つ専門的な知識やノウハウ(コンテンツ)を提供することで、クライアントを支援します。このタイプのコンサルティングは医師や弁護士の如く、豊富な知識を使ってクライアントを診断し、適切な解決策を処方するというものです。

そしてもう2つ目のタイプが「プロセス・コンサルティング」です。これは、クライアント「自ら」が自分の問題を発見し解決策を考えて実践できるようにと、その取組の過程(プロセス)を支援します。このタイプは専門家ではなく、「援助者」でありカウンセラーとでも言うべきものです。クライアントと一緒にそして対等に問題に取り組みながら、クライアントが自ら問題を解決できるようにファシリテーション(促進)していきます。

例えば商店主や中小企業の場合、問題解決に対して最善解や技法が分からず、「なるほど!」とか「あっ!そうか!」となるようなインパクトのあるコンテンツを教えてほしい、といった要望がよくあるのですが、理科学的な技術領域ならば限りなく正解に近い最善解やコンテンツはありますが、社会学的な領域では最善解も多様ですし状況によっても選択肢が多く、ジャストフィットしたコンテンツの提供は非常に困難です。そのためにコンサルタント無用論が現場から口にされることも多々あります。

日本人は権威に弱く、戦略の方向づけや意思決定など組織内で誰も責任を担いたくない場合、大手企業ですら、欧米のコンサルタント会社に依頼することで、その権威を政治的に利用してその場を凌ごうとするケースもよく見受けられます。

それによって日本の多くの経営者たちは、コンサルティングというビジネスをコンテンツを提供する生業であると(コンテンツ・コンサルティングこそがコンサルティングビジネスであるかのうように)錯覚しているのが実際です。

しかしながら、うまくコンサルティングを活用している組織だった大手の企業の場合、事前にWebや論文などで情報収集をしていて、コンテンツ的な情報は持っていることが殆どであり、むしろ「どうやって社内の組織を動かしていったらよいか一緒に考えてほしい」「第三者的な客観性やメタ認知力を持って、(特に)関係者の感情的な絡み合いを紐解いていってほしい」と悩んでいることが多いものです。

そうした場合に、求められるのが「プロセス・コンサルティング」です。そこではコンサルタントにはプロセス・ファシリテーションの役割が求められているのです。こうした状況では、コンサルティング機能の主体は顧客自身に問題の摘出とその解決策のためのストーリーを考えてもらうことの手助けをするということになってきます。

MITスローンスクールのE.シェイン教授は、2002年に出版された名著「プロセス・コンサルテーション:援助関係を築くこと」において、プロセス・コンサルティング10の原則を紹介しています。

①常に力になろうとせよ

②常に目の前の現実との接触を保て

③自分の無知にアクセスせよ

④あなたのすることはどれも介入である

⑤問題を抱え、解決法を握っているのはクライアントである

⑥流れに身を任せよ

⑦タイミングが極めて重要である

⑧真っ向から対決する介入は建設的であること

⑨すべてはデータである。誤りは避けられないが、そこから学習せよ

⑩疑わしいときは問題を共有せよ

このようなプロセス・コンサルテーションですが、これを機能させるには、当然プロセスという存在への知見や関心と理解、また技能習得が必須となってきます。もちろん社内的にこういった技能を持った担当者が居ればまさに「鬼に金棒」です。欧米では企業内に組織開発部署を設け、社内コンサルタントを要請し、社外コンサルタントとうまくジョイントさせて問題解決に当たっているのが常識になっています。日本では外資を中心にビジネスパートナー性を設けてやや社内コンサルタント的な動きをしている会社もありますが、どちらかといえばこれはコンテンツ型の領域に多く(これはビジネスパートナー自体がプロセスを十分に理解していないことによる部分もあります)、プロセス・コンサルテーションの領域までは達していません。国内企業においては大手も含めて当該する人事部自体がプロセスを分かっていないのが現実です。

ではプロセスとは一体どういった世界観なのでしょうか。

(次回に続く)